【デスク発ウラ話】世界一!侍ジャパンの裏MVPは“裏方”秋山翔吾

2019年11月18日 12時00分

 日本野球が実に10年ぶりとなる世界一の座へ上りつめた。国際大会「プレミア12」の決勝戦(17日、東京ドーム)で侍ジャパンが韓国代表を破り、初優勝を飾った。2009年の第2回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)以来、遠ざかっていた世界の頂点へ到達。チームの面々は祝勝会のシャンパンファイトで文字通り、勝利の美酒に酔いしれた。その中に加わって、はじけんばかりの笑顔を見せていたのが、西武・秋山翔吾外野手だ。

 このプレミア12開幕直前の強化試合・カナダ戦(10月31日・セルラースタジアム)で右足第4趾(薬指)基節骨骨折を患い、チームから離脱。それでも“JAPANの精神”は失わず、チームが台湾で行われていた1次ラウンドB組を突破し、日本に戻ってきたスーパーラウンドから侍ジャパンの全試合を観戦に訪れた。試合中はスタンドから熱い視線を送り、プレーボール前とゲームセット直後にはベンチ裏にまでやって来て侍メンバーたちを一人ひとり激励。米国戦で大会初黒星を喫し、チームのムードが悪くなりかけた際には自らがイジられキャラになるなど選手たちに明るさを取り戻させるため、あの手この手で心血を注いでいた。その細かい気配りに対しては、チーム内から「裏MVP」との声も上がっていたほどである。

 今大会で主将を置かない方針だった侍ジャパンにおいて稲葉監督から代表選出時、実質上のまとめ役を任されていた。それだけに志半ばで戦列を離れてしまった責任感からチーム再合流を直訴。実は指揮官もその意気込みを買い、再合流早々の秋山に全体ミーティングへの参加を促していた。ところが秋山本人は意外にも、この提案を「自分は選手ではないので」と固辞。あくまでも“裏方スタッフ”としてチームを泥くさく支え続ける意思を示した。

 チームとしての秩序を守るため、自分だけを特別扱いすることは避けてほしい――。どうやら、そうした秋山なりの配慮があったようだ。

 どこまでもひた向きな秋山の姿勢には、稲葉監督をはじめ侍の面々も大きく感激していた。侍ジャパンが背番号55の代表ユニホームを開幕から全試合でベンチに掲げていたのも「我々の心は秋山とともにある」という気持ちの表れであったのは言うまでもない。決勝の韓国戦でも勝利が決まると、侍ジャパンのユニホーム姿でマウンドに集まって歓喜の輪に加わり、稲葉監督を胴上げ。本音としてはプレーできなかった無念の気持ちもあるはずだ。しかし、それをうかがわせることもなく大ハシャギしながら侍ジャパンの快挙達成を“チームの一員”としてたたえていた。

「秋山がいなかったら、世界一には絶対になれなかったと思う」

 侍ジャパンの関係者が、このようにポツリとつぶやいていた。確かにそう思う。ただ今オフのメジャーリーグ移籍がかなうことになれば秋山の侍ジャパンへの参加は実質上、困難になる。東京五輪での金メダルを目指すためには、求心力の高い“ポスト秋山”の存在を見つけることが急務だ。

(運動部デスク・三島俊夫)