前世は韓国人か!?というくらい韓国料理が好きで、食事シーン満載の「ゴハン行こうよ」という韓流ドラマにハマっている。tvkでいまシーズン2をやっていて、本国では最近、シーズン3の制作が決まったとか。

 主人公は食通の人気グルメブロガー。ただ料理の写真は一切ブログに載せず、残さず、きれいに食べ終えた食器の写真だけアップする。思わず完食してしまうほどウマかった、というのを読者に伝えるためだ。

 でも実際、韓国で地元の友達とゴハンに行くと、みんな大概残す。ソウルで先日、5人でポッサム(ゆで豚)を食べたときも、さっき追加の肉を頼んだばかりなのに、大皿に半分以上食べ残し、2次会のカラオケへ移動。後ろ髪を引かれる思いだった。

 友達いわく、その昔、偉い人の食べ残しを部下たちが食べていた時代の名残だとか。中国も同様で、完食すると出された料理の量が足りなかったのかと受け取られ、逆に失礼だと聞いたことがある。とはいえ、出された食事は全部平らげるのが基本の自分に、こうした“残す食文化”はどうもしっくりこない。中国など外国人観光客の食べ残しを見て“もったいない”“食べ方が汚い”と思った経験、日本の飲食店業者ならあるのでは。

 よく東京へ遊びに来る北京在住の長年の友達(30代)も、昔は結構食べ残しがひどかったが、最近はずいぶんマシになった。彼いわく「日本人には、中国人って公共マナーが悪いイメージあると思うけど、自分らより若い世代は変わってきてるよ。だから長い目で見てよ」。

 LCC(格安航空会社)の普及もあって、近場の海外旅行はより身近になった。それぞれの国で人の行き来が増えれば、旅行者が文化の違いを直接肌で感じる機会も増える。日本に来た外国の友達が大概驚くのは、ゴミが落ちていない、整然とした電車の乗り降りなど、日本人の公共マナーだ。旅行者がそんな経験をSNSに書き、本国で広めてくれる。いいサイクルだ。

 食事マナーに関して言えば、もともと親日家が多い台湾にもう何十回も行っていて現地の友人はたくさんいるが、大勢で食事に行くと、みんな極力平らげようとしている印象だ。中国的というよりは日本的。残った料理をテークアウトしたり、食べ放題へ行くと過度な食べ残しに罰金を科している店もある。

 以前、某タレントのツテで有名な占い師に前世を見てもらい「あなたの前世は、飢えて山で野たれ死んだ男」と言われたことがあるが、そもそも自分はなぜ食い意地が張っているのか?

 記憶をたどると、死んだひいおじいちゃんは魚を骨まで全部食べる人で、食べ物への感謝をいつも話していた。また母方の叔父さんには「ご飯粒を一粒残したら目が潰れる」とよく言われた。子供のころはそれが理解できず、魚が苦手で“目は2つなんだから2回しか潰せないじゃん”と内心思っていたが、いつの間にか、ひいおじいちゃんの魚の食べ方をまねるようになり、ご飯は一粒残さず食べる習慣が身についていた。

 もちろん日本人にだって残す人はいるし、きれいに食べる中国、韓国人はいるだろうが、食べ物を大事に…という日本人の“もったいない気質”は素晴らしい文化だと思う。海外の友達と食事すると、いつも私が残飯整理係になり、結局食べ過ぎて苦しくなるが、今後も身を挺して日本人の“残さない食文化”を広めていきたい。

(文化部デスク・醍醐竜一)