【デスク発ウラ話】小野が語ったゴールの価値と重み

2019年10月07日 12時00分

 9日(日本時間10日)に行われたサッカーの欧州チャンピオンズリーグ(CL)1次リーグ第2節で、日本代表MF南野拓実(24=ザルツブルク)が、昨季王者のリバプール(イングランド)からゴールを奪い、日本勢8人目のCL得点者となった。ゴール自体もファインゴールだったし、それ以外の場面でも素晴らしいプレーの連続。欧州メディアから絶賛されたのも当然で、今後のさらなる活躍を期待せずにはいられない。

 この記事を作成するにあたり、過去のCLスコアラーの表を作っていると、意外なことにも気づかされた。奥寺康彦、中村俊輔、稲本潤一、本田圭佑、香川真司、内田篤人、岡崎慎司、そして南野。そう、この8人の中に中田英寿や小野伸二といった実力者の名前はないのだ。

 ペルージャ(イタリア)という小さな地方クラブで欧州のキャリアをスタートさせた中田は、その後ビッグクラブのローマへ移籍したとはいえ、欧州CLとはほぼ無縁のサッカー人生だったからこの事実も納得できるが、小野の場合はフェイエノールトというオランダの強豪クラブでレギュラーを張っていただけに、無得点だとは思っていなかった。

 こんな思い込みがあるのも無理はない。実際のところ、小野は欧州CLの舞台で得点を挙げており、私はその試合を現地で取材していたからだ。

 日韓W杯が終わった直後の2002年8月、フェネルバフチェ(トルコ)との欧州CL最終予選で小野は初戦のホーム、2戦目のアウェーでもゴールを決めた。ただし、これはあくまで「予選」で、本大会での得点者としてカウントされていない。それでも各方面に与えたインパクトとチームへの貢献度はそれ以上の価値があった。

 特に2戦目のアウェー戦は、試合前からフェネルバフチェのサポーターの殺気が漂い、スタンドに発炎筒が赤々とたかれる異様な雰囲気での試合。そんな中で、ゴール前にスルスルと上がった小野が先制ゴールを挙げた瞬間、一気にスタジアムが静まり返ったのを今でも鮮明に覚えている。

 試合後、速報用の原稿を書くために急いで小野のコメントを取りに取材エリアに向かったが、そこで一報が入った。

「稲本(当時はフラム所属)がインタートトカップ(当時のUEFA杯、現在の欧州リーグ予選)決勝でハットトリックを達成した」

 取材エリアで小野にこのことを話すと「あ~、負けた~」と天を仰いだ。欧州CL出場権を獲得する殊勲弾を決めたことは、決して「負け」ではないはずだが…。

「いやいや、この試合はCLの予選なんですよ。本大会でのゴールとは訳が違う。向こう(稲本)も予選だけど、3点も取った。どんな試合でも、3点取るってサッカー選手としてはすごいことなんですよ」

 取材者には計り知れないゴールの価値と重み。そう考えると、本大会での南野のゴールが日本サッカー史に残る一撃なのは間違いない。

 ただ小野は後日、こんなことも言っていた。

「サッカーってゴールも大事だけど、勝たなきゃ意味ないんですよね」

 チームを勝たせられなかった南野は、殊勲弾に浮かれることなく、たぶん小野と同じ思いを持っているだろう。

(運動部デスク・瀬谷 宏)