参院選で国政政党となった「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首が連日、話題を振りまいている。といってもテレビや朝刊紙で報じられることはほぼなく、主戦場となっているのはネット。ユーチューブを舞台に新たなうねりを起こそうとしている。

 立花氏は8年前からユーチューバーとして、活動していた。NHK集金人とのバトルや業界の裏話などで一定数のファンをつかんでいたが、大ブレークしたのは参院議員になってから。

 戦争発言の丸山穂高衆院議員のスカウトや本紙記事に端を発したマツコ・デラックスおよびTOKYO MXとのバトルで、チャンネル登録者数は50万人近くに膨れ上がり、再生数も100万回超を連発。それまで月300万円ほどの広告収入が、8月だけで月1000万円を突破し、その後もケンカ相手を見つけては討論を呼びかけ、“立花劇場”の勢いを持続している。

 永田町では「国会議員としての品格がない」と立花氏に冷ややかな視線が送られ、除名した中央区議への脅迫容疑を巡って、警察から取り調べを受けたことで、新聞、テレビの大手メディアからは“放送禁止対象”となってしまった。それでもユーチューブで自身の発信場を持つ立花氏は「こんな私が本来議員になってはいけない」「すべて炎上商法です」と意に介すことはなく、悪名は無名に勝るとばかりに物議を醸す行動を加速させている。


 立花氏の成功を目の当たりにして、“立花詣で”する議員や地方議員、ユーチューバーも後を絶たない。国民民主党の玉木雄一郎代表は1年前からユーチューブで「たまきチャンネル」を開設していたが、登録者数は8000人と伸び悩んでいた。そこに立花氏との対談企画を行ったところ登録者数は倍増以上の2万人超え。党内外から多くの批判を招き、釈明にまで追われたものの“立花効果”に感服した一人だ。

 国会議員ユーチューバーとしては、すでに不動の地位を築いたかに見える立花氏もまだ上には上がいる。インフルエンサーといわれるホリエモンやメンタリストDaiGo、レペゼン地球のDJ社長ら大物ユーチューバーとのコラボに奔走しているのだ。

 立花氏いわく「(インフルエンサーの)世代や支持している有権者は普段、政治にあまり関心がなく、投票にも行かない人が多い。選挙の投票率は50%にも満たないが、その人たちが投票行動に出たらどうなるか。ブルーオーシャンが広がっている」。過去、多くの政治家が開拓しようとしては散っていた無党派層の大票田。永田町に出現した国会議員ユーチューバーはドンキホーテかそれとも…。
 
(文化部デスク・小林宏隆)