圧倒的な勢いでCDを売り上げているのが歌手の福田こうへい(40)だ。8月にリリースしたシングル「北の出世船」は発売してわずか3か月で10万枚。CDの売れないこのご時世に圧倒的な存在感を見せつけている。

 2014年まで所属していた事務所との専属契約確認の裁判のため、2年以上も新曲を出せなかった福田。その間は連続出場していた紅白はストップし、テレビなどのメディア露出もない。新曲が出ないからプロモーションもできない。忘れ去られても何ら不思議はない立場にいた。

 にもかかわらず、裁判が終了し、いざ新曲を出してみれば一気に10万枚だ。ある音楽関係者は「この10万枚の価値は他の歌手とは違います。今は初回限定盤や通常盤A、Bだの3種類くらい出すのは当たり前。しかも春に出したと思ったら、秋盤などと称して別バージョンを出すこともある。その全てを合算して何万枚って言っている歌手が当然のようにいる中で、福田は通常盤1枚限り。今や名の通った歌手の中で1枚限りで勝負しているのは、宇多田ヒカルか福田こうへいか。そのくらい貴重なんです」。

 新曲が出せなくてもファンが離れなかった背景にあるものを、福田本人は「コンサートを大事にしてきたこと」と話している。裁判中の2年間も「常に満員でプラチナ化している」(前出の関係者)とも言われていた福田のコンサートだ。チケットはなかなか手に入らないかもしれないが、本人が「大事にしてきた」というだけあって、その中身は非常に面白い。

 もともと民謡出身の歌手だけあって声量は抜群で、伸びのある声質は聞いている者を引き込む。さらにファンを楽しませるのが合間のトークの技術。岩手出身の東北なまりで、観客イジリから、先輩歌手とのちょっとした笑いエピソードなどなど、とにかく笑いが絶えない。

 テレビの歌番組ではなかなかトークの面白さを見ることはできないだろうが、綾小路きみまろのようなトーク技術を持った歌唱力抜群の歌手がステージに立っているようなものだ。ファンが離れないのも無理はない。

 このトーク技術に福田を昔から知る関係者は「民謡をやっているときからいろいろなステージに立っていた。そのときから福田の中にいろいろなトークのパターンが出来上がっていたようで、今日の観客はこのパターンが反応がいいかな、今日はあっちよりもこっちのパターンかなといろいろあるんだよ」。

 そんな福田は来年2月に明治座で座長公演が決まっている。演劇とコンサートの2部構成で、芝居「母ちゃんの浜唄」は岩手から上京した青年の人情話。今から楽しみだ。

(文化部デスク・島崎勝良)