進化し続けるヤンキース田中「変化を恐れない」

2016年11月14日 12時00分

 不振に陥った野球選手でよく聞くのが「打撃、投球フォームを変えたことで、かえっておかしくなってしまった」という言葉だ。

 特に鳴り物入りでプロ入りした選手には、コーチだけでなくOBや評論家までもが群がって、あれこれアドバイスを送る。それに応えているうちに、自分にとって適したフォームが何なのかわからなくなり、ドツボにハマってしまう…そういったパターンが少なくない。

 直近のケースでいえば、巨人から日本ハムにトレードされた大田泰示外野手(26)。本紙記事でも「若い時からいろいろなコーチにたくさんの助言をもらい、大田自身が混乱しているように感じた」という、内田巡回打撃コーチのコメントが出ていた。

 本題はここから。

 こういう“混乱状態”を脱する一つの手段として「原点回帰」というものがある。あれこれ考えず「来た球を打つ、強いボールを投げる」に立ち返る。中には「全盛期、キャリアハイ時のフォームに戻す」選手もいるが、こうした方法を決して行わないのが、ヤンキース・田中将大投手だ。

「一度として同じフォームで投げたことがない」と断言し、シーズン中であっても日々、進化を求めて投球フォームを変えていく。もちろん、それで結果が出ないときもあるが「回帰する」「戻す」ことはしない。よりよい答えを見つけるために熟考し、納得するまでどんどん変化していく。

 迷走することを恐れたり、ためらうことはないのか…しかし、田中は報道陣にサラリと語っていた。「変化を恐れていないですし、いろいろなものにトライして今の形をつくり上げてきている。変化を恐れたら何もできない」。別の日にはこうも口にした。「(変わるかどうかは)それはもう本人次第だと思うんですよね。自分が本気でやろうと思っているか、そうではないか、っていう問題だけじゃないですか」

 素直にすごいと思う。でも、もうちょっと突っ込みたくなって後日、改めて聞いてみた。「私生活でも同じような思考なのか? 仮に間違った方向に行ったり、裏目に出たりしても、じっとすることなく、変えていこうとするのか?」

 すると「私生活はよくわかんないけど…」と苦笑い。そして返ってきた答えは「そりゃ、変えていきますよ。だって(なにがどうであれ)すべては良くしようとして『変えている』わけだから」。

「うまくなりたい」「今よりも良くなりたい」という意志がある以上、それは裏目でも迷走でもなく、すべて進化の過程。大事なのはそこに「覚悟」があるかどうか——。短い中にも、超一流アスリートが放つ言葉の“重み”を感じた。

(運動部主任・佐藤浩一)