43歳・イチロー メジャー16年間で培われた“男の温かさ”

2016年10月10日 12時00分

 メジャーで数々のタイトルを獲得し、8月に通算3000安打の偉業を成し遂げたマーリンズ・イチローも22日で43歳を迎える。すっかり白髪頭になってしまったが、野球へのストイックな姿勢はオリックス時代と何ら変わらず、チームの若い世代への影響力は大きい。

 1994年にオリックスで210安打の日本記録を達成して一気にブレーク。世間の注目を集めたが、当時のイチローは日々群がる我々報道陣に強烈な“近寄るなオーラ”を発していた。いわゆる“関西ノリ”が通用せず、雑談もままならない。鉄仮面を装っていたのか、性格的なものだったのかはわからないが、基本的にクールな対応を崩すことはない。報道陣との関係は決してなれ合いにならず「緊張感を持って、ともに成長する」という難しいスタンスだった。

 移動の際はヘッドホンステレオを装着して常に早歩き。試合後はダッグアウトで待ち受ける報道陣を横目に、黙々とグラブやスパイクを磨き続けた。球場を出ると神戸市内の行きつけの焼き肉店でサラダと牛タンを食べ、夜中に合宿所に戻ると室内練習場で深夜のマシン打撃。休日は決まって駐車場で入念に洗車をし、六甲山近くの喫茶店に一人で向かう。打席だけでなく、日常生活でもルーティンを崩されることを嫌い、周囲に“突っ込むスキ”を与えない。当然ながらチーム内で浮いた存在になってしまうが、それもお構いなし。ストレスを練習で発散し、野球に打ち込む姿勢はまるで煩悩を封印した修行僧のようだった。

 そんなイチローもメジャーに挑戦して16年がたち、ずいぶんと「丸くなった」という評判をよく耳にする。記者は一昨年オフに東京で行われたマーリンズの入団会見に顔を出した。昔と比べて表情も柔和で、報道陣の質問に丁寧に笑顔で答える。記者を見つけるや「懐かしい顔がいるね。あはは、太ったねえ」と軽口を叩いてきた。思わず「そう。ごめん…」と腹をさするしかなかったが、そこには年輪を重ねた男の温かさが感じられた。

 来季もメジャーで17年目のシーズンに向かうイチロー。近い将来、“天上人”が再び“下界”オリックスに降りてくるのか。深みの増した人間・イチローと接してみたいものだ。

(運動部次長 西山俊彦)