キセル、けんか…「撮り鉄」増殖で鉄オタのモラル崩壊

2015年06月11日 12時00分

「鉄(てっ)ちゃん」「鉄オタ」こと鉄道オタクは、趣味としてメジャーな存在になっている。しかし、メジャーになればなるほど、非常識人が参入して、鉄オタのモラルを破壊している。

 鉄オタには撮影好きな「撮り鉄」、走行音やアナウンスや駅のメロディーを録音するのが好きな「録り鉄」、乗車好きな「乗り鉄」、廃止する路線や車両好きな「葬式鉄」などがいる。中でも、もっとも増殖しているのが撮り鉄だ。

 ベテラン撮り鉄は「デジカメになって暗室や機材が必要なくなり、撮り鉄の敷居が低くなったんです。新規参入者が多いのでマナー違反も目立ち、ほかの鉄オタからも嫌われている。線路に立ち入って電車を止めたり、ホームに脚立を立て利用客の邪魔をしたり、私有地に入り込んだり、キセルで移動したり、警察沙汰も多い」と指摘する。

 今月(6月)、キセル乗車を通報されたことに腹を立て、通報した少年からカネやカメラを脅し取った高校生らが強盗容疑で逮捕された。高校生らは「同じ撮り鉄仲間として、キセルの通報をするのは許せない撮り鉄のタブーを犯した」と話している。キセルを通報するのがタブーとはまったくおかしな話だ。

 ベテラン撮り鉄は「撮り鉄は鉄道会社にあんまりお金を落とさないから、肩身が狭いはずなんです。乗り鉄みたいに鉄道に乗ってお金を使うわけじゃない。撮り鉄は車で移動して、良い撮影ポイントを探すので、電車を使わない。改札内に入らないから、駅弁を買わずにコンビニ弁当だし。キセルというのは、鉄道会社に損失を与える行為で大好きな電車をなくしかねない、最もしてはいけない行為です」と語る。

 しかし新規撮り鉄の中には、キセルが大好きで鉄道会社に損失を与える行為だと考えていないような者もいるようだ。

「事件を起こした高校生たちは車もカネもないもんだから、入場券で入って特急券も買わずに遠くまで行って、改札を出ずにホームで撮ってそのまま戻ってきたんでしょうね。これはキセルです。カネがない撮り鉄の間では、横行しているそうです」と嘆く。

 そのようなモラルに欠けた撮り鉄がいれば、トラブルが発生する。

「有名撮影ポイントでは、ある男性が自分の持っていた三脚を他の男性の三脚にぶつけ、殴り合いのけんかになるなんてことはざら。当然、パトカーが飛んで来ます。三脚は撮影ポジションを確保するためには有効な手段となります。いいポジションを確保するために、大型三脚を使う人もいます。でも実は、少しずつ相手を押しのけるのにも使えるんです」

 また、私有地の有名撮影ポイントには多くの撮り鉄が踏み入るため、地主は対抗策を取ることになる。

「ある有名撮影ポイントが有料制になってしまった。地主が入場料500円を徴収するようになった。安いと言えば安いのですが、酷いですよね。我々を排除するためにやっているんでしょう。撮影が終わってから、腹いせに畑にオシッコやウンコをするヤツが出ています」(同)

 今月(6月)8日、福島県警白河署は同県白河市のJR東北線白河—久田野間で、約880メートルにわたって設置されていた鉄の棒約100本が抜かれ、線路脇に放置されていたと発表した。前の週末、特別列車が運行しており、捜査関係者は撮り鉄が撮影のために抜いたのではとみて、捜査しているという。

 モラルを持ってささやかに楽しんでいた撮り鉄の世界が壊れてきているようだ。

(文化部デスク・三浦伸治)