今なお意味不明のアルシンド「400万円事件」

2014年05月19日 12時00分

 かつて「Jリーグの盟主」と呼ばれたヴェルディ川崎(現J2東京V)を担当していた1995年の話。チームは94年夏にエースのキング・カズことFW三浦知良(現J2横浜FC)がイタリア・ジェノアに移籍した穴を埋めるため、鹿島からブラジル人FWアルシンドを獲得した。

 鹿島に所属した2年間で50ゴールという実力に加え、まるでカッパのような独特のヘアスタイルが大注目されたストライカー。某カツラメーカーのテレビCMにも出演するなど、大人気を博した。移籍後は、すぐチームにもなじみ、ゴールを量産していた。

 そんなある日のこと。アルシンドが突然クラブハウス内の記者室に乗り込んでくると、紙袋から100万円の札束を取り出し、机の上に4つ放り投げた。ポルトガル語が話せないため、英語で「その金はどうしたんだ?」と聞くと、つたない英語で「勝利給だよ。今日もらったんだ」と笑顔を見せた。

 クラブ関係者に聞くと、アルシンドの給料は米ドルで支払う契約で、ブラジルの銀行に毎月振り込んでいるという。ただ日本で生活するには円が必要となるため、サラリーとは別に支払う勝利給を毎月、現金で支給していた。この時も、1試合100万円×4勝で400万円を手渡したという。

 記者室にわざわざ顔を出す選手がいないことに加え、大金を持参する選手などもちろんいない。アルシンドは一体どんな意図があって、現金を見せつけたのか。報道陣が真意を測りかね、困惑した表情を浮かべていると、日本語で「勝負、勝負」とトランプを切るしぐさを見せ、机の上にある400万円を指さした。

 まさかの申し出に記者たちが「ノー、ノー」と声を揃えると、アルシンドは札束を集め、CMでおなじみだった「友達ならアタリマエ」という決まり文句を意味深に叫びながら、帰路についた。その後「400万円事件」について、話を聞く機会はなかったが、果たして、どんな意味があったのだろうか。

(運動部デスク・三浦憲太郎)