かつて「Jリーグの盟主」と呼ばれたヴェルディ川崎(現J2東京Ⅴ)を担当していた1990年代半ばの話。V川崎の所属の某有名選手(名誉のため匿名で)が日本代表として臨んだ中東遠征で体験した、ちょっと恥ずかしいエピソードを教えてくれた。

「空港に着いて荷物検査をされるんだけど、なぜかオレだけが細かくチェックされて、入念に調べられた。“ヤバイな”と思っていたら、やっぱりスーツケースの底に隠しておいたエロ本が見つかって…。係員はニヤニヤしながら何か言っていた。意味はわからなかったけど、そのまま没収されてしまった」

 現在と違ってインターネットもDVDも普及していない時代のこと。長期海外遠征に出る“健康な男子”なら「ほぼ100%」の確率で持参していたというが、さすがに戒律の厳しいイスラム圏の国には持ち込めなかったようだ。ちなみに筆者も中国の空港で「わが国には、このようなものは持ち込めません」と没収された経験がある。

 同選手は当時「普段なら(かばんの中を)そこまでチェックしないのに…。絶対に嫌がらせだった。日本代表とわかっていて、オレがターゲットにされたんだ。後ろに並んでいたやつは何事もなかったような顔していたけど、絶対にバレてたでしょ。超恥ずかしかったよ」と告白した。

 海外では自国の勝利のため敵国代表チームに嫌がらせするのは日常茶飯事だが、今回の一件は“アウェーの洗礼”と言えるのかどうか…。

(運動部デスク・三浦憲太郎)