スキャンダルの渦中にある芸能人がイベントに出席し、スタッフから質問内容を制限されることがある。くだらないとは思いつつ、あれはあれで仕切る側の都合からすれば仕方ない部分もある。しかし、自分が出席した会見の中でもっとすごいNGを出された会見がある。サッカーのロナウドの会見である。

 ロナウドといえば、現在ではポルトガル代表のクリスチアーノ・ロナウドを指すが、ここで紹介するのは2002年日韓W杯で大活躍した元ブラジル代表のFWロナウドのことである。彼は1994年の米国W杯後にバルセロナで驚異的な活躍をし、一躍世界的なスターとなった選手だ。

 あれは確か、1998年フランスW杯前のことだった。そのロナウドが来日し、会見を開くということでスポーツマスコミが殺到した。

 なんでもアドバイザーとして参加した海外の高級時計の宣伝が主目的ということだった。ところが、会見場に行った皆の目が点になった。配られた資料に注意事項として「本日は時計に関すること以外の質問は受け付けません」という一文が記されていたのである。つまりサッカーの質問もNGというわけだ。

 ロナウドに時計の質問なんかしてどうする? 会見場にいる誰もがそう思ったに違いない。案の定、ロナウドに時計の質問をする奇特な記者は誰もいなかった。静まり返った会見場でロナウド本人も居心地悪そうにしていたのを覚えている。

 おそらく、これはロナウドの意向ではなかったと思う。PR会社など周囲が気を使いすぎて失敗した典型だろう。後日PR会社からおわびの書面が届いたほどだ。今まで様々な記者会見に出席したが、あれほど滑稽な会見は見たことがない。

(編集顧問・原口典彰)