私だけが知る浅田真央さんの素顔

2017年07月06日 12時00分

 バンクーバー五輪フィギュアスケート女子銀メダリストの浅田真央さん(26)が引退表明したのは4月のこと。元フィギュア担当だった私も、都内のホテルで行われた引退会見に出向くことになった。

 報道陣400人、テレビカメラ45台以上。あまりのメディアの数に圧倒されつつ、フィギュアスケートを注目競技にした功績を思わずにはいられない。女子選手では世界でも数人しかできないトリプルアクセルをこなす天才少女。それでいてあどけない、無垢な印象が国民的な人気を呼んだ。

 年齢制限のため出場がかなわなかった2006年トリノ五輪から、日本中の熱視線を浴び続けた真央さん。この日の会見でもすがすがしいほどの笑顔と、ピュアなコメントで報道陣を魅了した。

 私は「最後の最後まで、真央ちゃんキャラ全開だな〜」と感心する一方、このように常に愛玩的な文脈で語られることに違和感を覚えていた。もしかしたら、この世間が求める評価が、逆に彼女を苦しめる側面はなかったか——。そう感じることも一度や二度ではない。というのも、もっと真央さんは人間味あふれる存在だからだ。

 例えば、07年に姉の舞さんと某メーカーのCMで共演した時のこと。当時、姉妹でケンカすることがあったりすると真央さんは「お姉ちゃんがCMに出れるのも真央のおかげなんだからね!」と言い放ったことがあるとか。「バーター」を名指しされた舞さんは、もちろん怒り心頭だが、私は「ああ、きょうだいなら、こんなことも言うよね」と思ったものだ。

 また、バンクーバー五輪ではこんな話もあった。本番前の練習後、記者会見が行われる予定だったが、真央さんは「クールダウンが必要」と言って聞かなかった。すると、会見の時間は大幅に遅れてしまう。慌てた関係者が「時間が決まっているから行かなきゃ」とせかすと、真央さんは「じゃあ、Aさん(この関係者)は、真央がメダル取れなかったとき、責任取ってくれるの〜?」とニヤリ。これにはAさんも苦笑するしかなかったという。

 ほかにも、ある大会で「忘れ物、忘れ物〜!」と叫びながら、プレスルームに乱入。1人で原稿を打っていた私を驚がくさせたこともあった。「どうしたの?」と聞くと「○○を忘れたの〜」とあちこち捜し回っていたが、プレスルームにはないよね(笑い)。いずれも、聖人君子のようなキャラとは異なる、人間味あふれる真央さんのエピソードではないだろうか。

 現役を引退した今、これまでのキャラを演じる必要はない。肩の荷を下ろし、もっと、いろいろな感情を打ち出す〝ブラック真央ちゃん〟を期待している。

(文化部デスク・土橋裕樹)