U—20W杯に参加した日本はベスト16で敗退した。5季ぶりの出場も上位進出を果たせなかったものの、飛び級で参加した15歳のFW久保建英(FC東京U—18)が注目された。アマチュアの現役高校1年生がプロ選手に交ざって、大きな存在感を示した。

 特に大会中に披露したノールックでのスルーパスなど、パス一本で決定機を演出できる能力は世界でも高評価を受けた。高い技術力と併せ、将来が楽しみな選手であるのは間違いない。一方で、Jクラブの下部組織出身の選手で大きな飛躍を果たした選手が少ないのも事実だろう。

 実際にロシアW杯を目指しているハリルジャパンの「ビッグ4」はユース年代(高校生)でいずれもJクラブに所属していなかった。FW岡崎慎司(31)は滝川二高(兵庫)とFW本田圭佑(30)は星稜高(石川)、DF長友佑都(30)は東福岡高(福岡)といずれも部活動。10番を背負うMF香川真司(28)は宮城県のクラブチームでプレーしていた。

 久保が2年前まで所属していたスペイン一部の強豪バルセロナの下部組織は、世界中から同世代のトップ選手が集まる場所。小学生で加入した久保も大きな刺激を受けて技を磨き、レベルアップを図ってきた。しかしクラブ側の未成年選手の獲得でペナルティーを受けた影響で久保も試合に出場できなくなり、無念の帰国。FC東京の下部組織に入った。

 FC東京の育成部門には優秀な選手も指導者も揃っているものの、世界中から優秀な選手を集めていたバルセロナと比べると“最高の環境”とは言えない。実際にプロでも欧州各国リーグとJリーグでは大きな格差がある。イタリアのACミランに所属していた本田も「海外リーグでやっている選手とJリーグの選手では日々の練習から厳しさが違う」と話していたことからも明らかだ。

 置かれた環境が選手の成長に大きく関わるのは間違いないところ。特に大きな成長を実現できる次期と言われるユース年代となれば、その影響は小さくないはずだ。

 もちろんFC東京側も久保の将来をしっかりと考えており、ユースチーム(FC東京U—18)だけではなく、J3に参戦するプロ選手主体のU—23チームで練習させるなど、少しでも高いレベルを提供し、成長できるように支援している。

 誰もが認める才能を持つ久保をしっかりと世界トップまで育成できるのか。FC東京だけではなく、日本サッカー界全体としてJリーグ育成部門の真価が問われている。

(運動部デスク・三浦憲太郎)