中日で2015年に山本昌、谷繁元信、小笠原道大、昨季限りで岩瀬仁紀、荒木雅博といったベテラン勢が次々と現役引退したことで、今季からチーム最年長となったのが山井大介投手(41)だ。巨人・上原が電撃引退したため、球界最年長投手でもある。

 2007年の日本ハムとの日本シリーズ、日本一に王手をかけて臨んだ第5戦、先発した山井は8回までパーフェクトの快投も、落合監督は9回から岩瀬にまさかのスイッチ。史上初の「継投による完全試合」での決着は「幻の完全試合」として物議を醸した。

 昨季はプロ野球史上9人目の40代での完封勝利を達成し、17日現在、今季7試合に登板して2勝1敗、防御率4・54。おじさんの星は「誰よりも負けたくない気持ちを持っている」と元気いっぱいだ。

 山井ほど〝一本気〟な男をこれまで見たことがない。

 中日担当記者歴16年目になるが、実は、山井には昔からここ最近まで、よそよそしい態度を取られてしまい、最低限の取材しかできない状態だった。思い当たることがなく、ずっと気になっていたのだが…。

 その真相をやっと山井から教えてもらえたのは、17年3月に川上憲伸が正式に現役引退を発表してから。それは10年以上前に川上を大激怒させる記事を書いてしまったことが発端となっていた。

 その当時、川上から山井は「あんな記事を書いてあいつは許せない。絶対に口も聞かないように」と厳命されていたというのだ。しかし、すぐに川上本人には謝罪を済ませて和解し、それからは良好な関係を築いてきたつもりではあったので、その理由を聞いた時はさすがに驚きを隠せなかった。

 それでも山井は「尊敬する川上さんの言ったことは絶対ですから。たとえ川上さんが許していても、僕が川上さんから『もういいぞ』と言われない限り、僕はずっと言われたことを守り続けていくだけです」ときっぱり。

 そこで何とか山井への〝禁〟を解いてもらうべく、慌てて現在評論家になっている川上氏にお願いに行くと「俺、そんなこと山井に言ったかな? 全く覚えてませんよ」と言われて拍子抜けしてしまった。言った張本人がすでに忘れてしまっていることを、ずっと山井は忠実に兄貴分の命令として守り続けてきたというわけだ。

 今では遠征先で一緒に食事に行ける間柄にはなれたが、これほどまでに愚直な男が一年でも長く現役を続けられるよう応援したい。

(運動部主任・霞上誠次)