【デスク発ウラ話】ハダカの長嶋巨人(44)

2019年05月27日 12時00分

【長嶋監督の巻】

 長嶋巨人で印象に残っているのが、野村克也監督率いるヤクルトとの「因縁の対決」だ。

 現役時代からのライバル関係もあって、野村監督はしきりに長嶋監督を挑発してくるわけだが、基本的に長嶋監督は公の場では反論はしない。だが、ホンネがついポロリと出てしまったのが「目には目を」発言だった。

 1994年5月11日、神宮球場で行われたヤクルト戦は、両軍死球合戦の末に大乱闘となる大荒れの展開。その試合後、長嶋監督がクラブハウスに戻る際のぶら下がり取材で「目には目をですから」と報復死球の指示を公の場で認めてしまったのだ。

 この発言を朝刊スポーツ紙が一斉に報じ、NPBも事実確認に動くほどの大問題となったのだが…。翌日になって長嶋監督は、コメントしたことを全否定。長嶋監督のついたウソを追及するマスコミもなく、その発言自体が「なかったこと」になったのも、当時駆け出し記者だった自分には衝撃的だった。

 また、野村監督の「ID野球」に対し、長嶋監督の采配は「思いつきのひらめき采配」「カンピューター」などとやゆされることも多かった。長嶋監督はこれにも忸怩(じくじ)たる思いを抱いているはずだった。

 だが、そんな長嶋監督が99年のシーズン途中から、采配がずばりと当たった試合後など、その意図を聞かれると「カンピューターですよ。エッヘッヘ」と自ら言いだすようになった。

 後日、その言い分をたっぷりと聞かせてくれたことがある。

「コンピューターは時代に合わせて、ハードやソフトを替えていかなきゃいけないでしょ。コンピューターはすぐ古くなってしまうんです。でも、カンピューターはそうじゃない。やっぱり、今の時代はコンピューターじゃなくてカンピューター。カンピューターなんですよ!」

 まさに圧巻の理論武装。セオリーにとらわれず、動物的なカンで何度も劇的な一打をかっ飛ばし、ピンチを切り抜けてきた長嶋監督でしか語れない名言だと、当時感動したことを覚えている。

 野村監督の「ID野球」以降、データ分析の技術は世の中のIT化で格段に進歩し、現在はトラックマンなどにより最新鋭の解析が可能となっている。だが、そんな時代だからこそ「野性のカン」を重視する采配があってもいいはず。型にはまったデータ野球ばかりではなく、長嶋監督が見せてくれたような、筋書きのないドラマを見たいと思っている。

(運動部デスク・溝口拓也)