つい先日のことだ。プロ野球の春季キャンプ取材で、ちょっとした“トラブル”に出くわした。本紙評論家とともに宮崎空港から空路で那覇空港に到着した直後のこと。予約していたレンタカーをピックアップしようと営業所のカウンターで名前を告げた。ところが、その場で対応した女性従業員の様子がなにやらおかしい。普通ならばすんなりと手続きへ進むはずが、登録用のコンピュータ画面とにらめっこしながら眉間にしわを寄せたまま何度も何度もキーボードを叩いている。

「あの…ご予約いただいたのは、三島さまですよね?」

「はい、三島ですが…」

 どうやら、予約したはずの名前が見当たらないということらしい。だが、そんなバカな話はない。2週間以上も前に予約を入れ、前日もこの営業所に再確認のための電話連絡をしたばかり。どう考えても、こちら側に落ち度や非はない。

「何で予約が入っていないんですか?」

 ややイラついた口調で文句をいったものの、対応した女性従業員は「いや、そう言われましても予約が入っていないので…」と困惑気味にそう答えるだけだった。

「じゃあ、予約を取り直してください」

「いえ、もう予約はいっぱいなので申し訳ないのですが、お取りすることができません」

「それは、そちらの責任でしょう? 私はきちんと間違いなく予約を入れたんですから、何とかしてください!」

「そう、言われましても…」

 そんな押し問答が15分以上続き、さすがに焦り始めた。自分だけだったらまだしも、この日は本紙評論家をアテンドしなければならない大事な役目を担っていたからである。ご機嫌を損ねてしまったら大変だ。

「こんなはずじゃなかったんですが…。すみません」と平謝りしたものの、本紙評論家は表情を曇らせて「……」。これは明らかにまずい雲行きだ。このまま本当に予約が取れなかったらどうすればいいのか——。顔面蒼白になっていると突然カウンターの奥から営業所の責任者が出てきて、いきなり頭を下げ始めた。

「すみません“ニシマ”さまではなくて“ミシマ”さまですね。予約が“ニシマ”になっておりました。ほ、本当に、本当に、も、申し訳ありません!」

 要は電話で予約を受けた担当者が「ミシマ」を「ニシマ」と聞き間違えて入力していたというのである。その瞬間、そばにいた本紙評論家は大爆笑。そしてこう言った。

「どうやって、ミシマをニシマにするんだよ。オレも長い人生、いろんな人と会ってきたけどニシマさんという名字の人にはお目にかかったことがない」
 とにかくホッとした。正直に言えば予約がないことよりも、本紙評論家が怒りを爆発させてしまうほうが何より心配だった。だから「雨降って地固まる」ではないが、レンタカーをピックアップしてからは、このてん末が結局笑い話になった。

「まあ、こういうあり得ないミスに遭遇するのも何かオマエらしいよな。ハハハ」 

 以降、予約の際に「ニシマじゃなく“ミ・シ・マ”です!」と念押しするようになったのはいうまでもない。(運動部デスク・三島俊夫)