ビートたけし本紙客員編集長が審査委員長を務める「第26回東京スポーツ映画大賞」授賞式が2月26日、都内のホテルで行われた。

 同時表彰の「第17回ビートたけしのエンタテインメント賞」日本芸能大賞を受賞したのが落語家・桂文珍だった。最近は自身でも落語を行っているたけしは「今の落語家で一番うまい。新作も古典もうまい」と文珍を絶賛し、表彰に至った。

 ただ本来なら文珍は、仕事の都合で授賞式に出席できないはずだった。というのもこの日は、昨年1月に亡くなった三代目桂春団治さんの「一周忌追善落語会」が大阪で開催されていた。上方落語界にとっては大切な公演で、文珍も出演が決まっていたのだ。

 だが文珍は、たけしの「ぜひ来てほしい!」というラブコールに応えるべく、授賞式に間に合うようにわざわざ出番を早めてもらって大阪から駆けつけた。所属する吉本興業関係者は「文珍さんの格から言っても当然、後半に登場する予定だったが、出番を早めて前座の次に出た。東スポ映画大賞の授賞式に出るために高座を終えた後、すぐに東京に向かったんです。それほど『表彰したい』という、たけしさんの気持ちがうれしかったようです」と明かした。

 文珍に限らず、東スポ映画大賞では受賞者がスケジュールを調整して授賞式に駆けつけるケースが毎年のように見られる。特に芸人は「たけしさんが呼んでくれるなら」と、入っている仕事を無理に変更してまで出席してくれることが多いのだ。今年、日本芸能賞に選ばれた銀シャリ、ライスも、当初は仕事が入っていたが、それを調整して駆けつけた。

 過去のケースでは、「第5回ビートたけしのエンタテインメント賞」日本芸能大賞を受賞した陣内智則がそうだった。当時、大阪で活動していた陣内は授賞式当日に大阪でテレビ2本の収録とラジオ1本の生放送が入っていたため「どうしても出席はムリ」と返事があった。

 だが直前になってマネジャーから「やっぱり行きます。本人が『どうしても行きたい』と言うので」と連絡があった。何とテレビ局にかけ合って収録をずらしてもらったうえ「ラジオは飛ばすことにしました」というのだ。

 仕事を1本外してまで授賞式に来た陣内は「たけしさんは僕にとって『尊敬してる』以上の存在。『今年ダメやから来年呼んでください』というワケにもいかんし、来ましたよ」と熱い思いを明かした。

 また「第14回ビートたけしのエンタテインメント賞」日本芸能賞のテンダラーに至っては、何と授賞式当日の午後7時から大阪で単独ライブが予定されていた。さすがに欠席かと思いきや、「行きます! ただ出番を最初にしてもらえませんか」。というわけで、4時開演の授賞式の最初に登壇し、自分の出番が終わるとすぐさまタクシーで羽田空港に移動して大阪へ引き返した。

 それでも単独ライブの開演時間には間に合わなかったとか。後になって聞いてみたところ「僕らが到着するまで、若手につないでもらいました」。そこまでして授賞式に出席してくれた芸人さんたちには、感謝の気持ちでいっぱいだ。

(文化部デスク・藤野達哉)