元ワム!のジョージ・マイケルさんが亡くなった。「またか…」と感じたロックファンは多いだろう。

 なにしろ2016年は1月のデヴィッド・ボウイさん、イーグルスのグレン・フライさんから始まって、アース・ウインド&ファイアーのモーリス・ホワイトさん(2月)、EL&Pのキース・エマーソンさん(3月)とグレッグ・レイクさん(12月)、プリンスさん(4月)など、ロックやブラックミュージックの超大物たちが次から次へと鬼籍に入った。

 個人的には11月に亡くなったレオン・ラッセルさんとレナード・コーエンさんも、大好きなアーティストだっただけに喪失感が大きい。

 これだけ訃報が相次ぐと、やはり“2016年”という年は悪い意味で特別な一年だったのではないか、と思ってしまう。

 ここで、ふと考えた。じゃあ、昨年はどうだったのか、と。気になったので15年の訃報を調べてみたら、ちょっと驚いてしまった。海外のアーティストの訃報の数でいったら、今年よりも昨年のほうが圧倒的に多かったのだ。じゃあ、なぜ今年はたくさんのアーティストが亡くなったという印象なのだろうか。

 昨年亡くなったアーティストの例を挙げると、ブラックミュージックではパーシー・スレッジさん(4月)、ベン・E・キングさん(4月)、B・B・キングさん(5月)、アラン・トゥーサンさん(11月)など。ロックではプログレバンドの重鎮・イエスを率いたクリス・スクワイアさん(6月)やハードロック界のカリスマ、モーターヘッドの創設者だったレミー・キルミスターさん(12月)と、かなりの大物が亡くなっているのだ。

 どのアーティストもベテランでありブラックミュージックやロックの歴史に名を刻むビッグネーム。でも、今年亡くなった方々と比べてみると分かるように、大物ではあっても“大スター”という感じではない(特にヒットチャートでの成績ややセールス的な意味で)。

 つまり、毎年多くの大物アーティストが亡くなっているけれども、今年は特に大スターばかりが去っていったということなのだろう。

 現役でも1960年代から活躍しているアーティストたちは軒並み70歳を超えているし、来年以降もいくつかの突然の訃報を覚悟しなければならないのかもしれない。

 しかし、90歳のチャック・ベリーが来年は新作アルバムを発表するというポジティブなニュースもある。今年はザ・ローリング・ストーンズも久々の新作を出したし、2017年はそんな“ロックは死なず”的ニュースがたくさん届けばいいなあ。

(文化部デスク・井上達也)