ハダカの長嶋巨人(28)

2016年11月07日 12時00分

【長嶋監督の巻・その2】

 プロ野球をテレビの地上波ではなく、CSやネット中継で見ることが普通になってから、どれぐらいたつだろうか。

 近年「プロ野球危機」が騒がれた最大の年といえば、いわゆる「Jリーグ元年」の1993年だったのではないか。

 その年の巨人はもちろん、第2次長嶋政権の1年目。プロ野球人気の低下に強い危機感を持っていた長嶋監督は、番記者たちを巻き込んで連日のように話題を提供。結果、スポーツニュースのトップニュースや、スポーツ新聞の1面は長嶋巨人の話題がほぼ独占し、プロ野球人気は危機どころか、さらに上昇したように思う。

 あれは長嶋監督の薄くなった頭を、かつらメーカーが狙っているという記事を書いたときのこと。激怒されてもおかしくない原稿だったと思うのだが、長嶋監督は得意の流し目で「また何か書いたのか? へっへっへ…」で終了。批判的な記事だろうが、野球人気のためなら「どんどん書いてください」というスタンスはいつも変わりなかった。

 太った人を見かければ突然、組みついて相撲を取る。一時期、番記者の間で相撲がブームになり、ズボンのベルトのことを「まわし」と呼んでいたこともあったっけ。

 序盤に大量失点して試合に負けた次の日の朝、その試合を中継したNHKのディレクターに「んー、O竹さん、昨日はみっともない試合をしてすみませんでした。視聴率悪かったんじゃないですか?」と謝罪したこともあった。

 巨人は嫌いだけど長嶋さんは好き。オールドファンにそうした人たちが多いのも、長嶋監督を取材しているとよく分かった。

 そんな長嶋さんに近い存在のような気がしているのが、日本ハムの栗山監督。長嶋監督を尊敬しているという栗山監督は大谷翔平を「平成の長嶋茂雄にしたい」という野望を持っており、実際、大谷の活躍ぶりは「他球団のファンだけど大谷は好き」「野球は知らないけど大谷は知ってる」という状況を生み出している。何より栗山監督自身も番記者を巻き込んで「チーム栗山」として日本一になった。その一体感は他球団の番記者から言わせれば、すごいものがあると聞く。

 そういえば巨人の原前監督もメディアを巻き込んでの「チーム原」づくりがうまく、強いチームを作った。「お前もチームジャイアンツの一員だろ! もっとウチが有利になるような記事を書いてくれよ」と、その言い方はあまりにも直接的だったけど…。

(運動部デスク・溝口拓也)