独占激写もあわやお蔵入りだった破壊王の“炎のヤリ特訓”

2016年10月27日 12時00分

 福山雅治が週刊誌のフリーカメラマンを演じた映画「SCOOP!」を観賞した。同業だけにあるあるの連続だった。中でも二階堂ふみ演じる新人記者が突撃取材でシャッターを切るも、ブレた写真しか撮れずに「下手くそ」と罵倒されたシーンには苦い思い出がよみがえった。

 2000年9月に新日本プロレス道場の張り込みを命じられた。今は亡き破壊王・橋本真也さんが姿を現すかもしれないというのだ。当時、橋本さんは小川直也との遺恨対決に無残に敗れ、引退表明までしたが、再起を図っていた最中。肉体改造しているといわれ、各メディアが追うも、その姿をキャッチすることができなかった。

 待つこと数時間。黒塗りの車が道場前に横付けにされた。サングラス姿の橋本さんは、他を寄せ付けないオーラを発していたが、駆け出しで血気盛んだった記者はこのチャンスを逃すまいと直撃。すると意外にも橋本さんは「中に入れ」と立ち入りが禁止されている道場内での密着取材を許可してくれたのだ。

 ウオーミングアップから縄跳び、ダンベルを持ち上げての筋トレに励む橋本さん。記者は無我夢中でシャッターを切り続けた。すると橋本さんは付け人の鈴木健三(現KENSO)に2メートルはある闘魂棒を持たせると、「俺を突け」とリング上でヤリ特訓を始めたのだ。

 ヒートアップした橋本さんは本当に“火”がついてしまった。闘魂棒の先端にオイルを浸した布を巻くや、ライターで燃え上がらせたのだ。ちゅうちょする鈴木に橋本さんは「どうした、突いてこい」と要求。一歩間違えれば、髪や服に引火し、一大事となりかねない。時間にして、約10分ほどだっただろうか。記者はリングサイドにかぶりつきで、汗だくになって写真を撮り続けた。

 練習後は一問一答のインタビューも取れ「スクープ」と喜び勇んで本社に引き揚げたが、地獄が待っていた。緊張して、手が震えていたのか、50枚近く撮った写真はブレまくって、ほとんど使い物にならなかったのだ。写真部デスクから「なんでカメラマンを呼ばなかったんだ」と大目玉を食らったのは言うまでもない。

 それでも伝説といわれた炎のヤリ特訓まで披露し、復活にかける橋本さんの熱意を会社としても、ムダにするワケにはいかなかったのか、ピンボケの写真の中から、不格好ながらもなんとか使える2枚が選び出され、翌日には「独占特写!!炎のヤリ特訓」と終面カラーで掲載された。もしボツにでもなっていたら、橋本さんに会わせる顔がなかっただけに記者はホッと胸をなでおろしたものだ。

 絵(写真)がなくてはどうにもならない記事もある。以後、カメラには気を使うようになり、スマホ全盛の今でもデジカメを肌身離さず持ち歩いているが、いまだ炎のヤリ特訓を超える荒業に出くわしたことはない…。

(文化部デスク・小林宏隆)