紅白歌合戦に出場すること13回。もはや常連組の仲間入りともいえる演歌歌手・水森かおり(43)は、なんとも不思議な悩みを持っていた。

 日本各地の地名をタイトルにした曲を歌い続けてきた水森。今では“ご当地ソングの女王”とまで呼ばれるようになり、その曲を歌った各地で観光大使を務める。

 2002年の「東尋坊」がスマッシュヒットしたことをきっかけに、翌03年にリリースしたシングル「鳥取砂丘」が大ヒット。その年の紅白に初出場を決め、その後も、順調に連続出場回数を増やしている。近年の紅白では巨大衣装で歌う“新境地”も開拓しており「名前と顔は売れていると思う」と本人だけでなく、周囲の誰もがそう思う歌手にまで成長している。

 そんな水森はいまだ独身。「よくコンサート会場では『ウチの息子の嫁に』とか『ウチの孫の嫁に』とか『私の嫁に』とか声が掛かる。決してモテなくない!」と自負するが「今は歌が恋人」と言い切り、結婚の気配はない。

 だからだろうが先日、休みを利用し、ちょっとした温泉旅行をした際も、一緒に行った相手は親。独身を貫いている水森ならば、それはそれで致し方がないのだろう。問題はそこではない。本人にとって少々首をかしげたくなるのは「普通に街を歩いているんだけど、誰も『キャー! 水森さんだぁ』とか言ってくれないんだよね」。

 メガネを掛けていたり、帽子をかぶっていたり、変装じみたことは一切していなかったといい「観光客もいたんだけどねぇ〜。これでも紅白とか出てて、顔も知られていると思うんだけどね」とブツブツ。

 私も長年、芸能記者をしているが、街中で芸能人を見かけた経験はあまりない。そもそも、見かけたとしても、騒ぎ立てることはしない。そういうタイプの人間も世の中にはいるということは理解しつつも、水森としては「キャーキャーと言われたい」そうだ。プライベートはゆっくりしたいと思うのが芸能人ではと聞いても「遠目でいいから言われたい」のだとか。芸能人というのはやはり注目を浴びてこそ芸能人というものなのだろう。

「今度は『水森かおりです』って看板ぶら下げて歩こうかな」

 何でもぶっちゃけて話し、ちょっとしたことも笑いに変えられる水森だ。コンサートでもトーク部分はハンパなく面白い。この旅行の話も話半分といったところかもしれないが、それでも彼女のトーク力は目を見張るものがある。

(文化部デスク・島崎勝良)