リオデジャネイロ五輪で日本選手のメダルラッシュが続いている。そのブラジルに今から21年前の1995年、Jリーグ各クラブのキャンプを取材するため約1か月ほど滞在した。

 当時スター軍団だったヴェルディ川崎(現J2東京V)を中心に鹿島や柏など、各クラブの取材に奔走。サンパウロやサントス、リオデジャネイロなど各都市を訪問していると、地元記者から「リフティングの世界チャンピオンがサンパウロにいるぞ」との情報を聞いて、早速取材することになった。

 関係者を通じてアポイントメントを取り、指定の場所に向かうと、そこにいたのは14〜15歳くらいの小柄な金髪の美少女。体つきもきゃしゃでスポーツには縁遠いイメージだった。本当に世界記録保持者なのか。同行したお父さんに話を聞くと、彼女は9時間26分(23秒)もの間、ボールを落とさずにリフティングを続けたという。証拠として記録を出した当時の地元紙も見せてくれた。

 少女もその場でプロ顔負けの華麗なテクニックを披露。まだ幼さが残る顔つきながら、真剣にボールを蹴り続けてくれた。インタビューでは表情が一変。愛らしい笑顔を浮かべ「いずれはプロサッカー選手になりたいの」。そのギャップが非常に印象的だった。

 それから4年後の1999年。ある報道を見て驚いた。当時ブラジル代表の絶対エースFWロナウドが結婚。その記事には「夫人はモデルでリフティングの元世界記録保持者」と書いてあり、ロナウドの隣に写っている女性に見覚えがあった…。すぐに当時の取材ノートを見直すと、ロナウド夫人と同じ名前の「ミレーネ・ドミンゲスさん」と書いてある。かつてブラジル取材で出会ったリフティング女王だった。

 しかもミレーネさんはモデル業に加えて女子サッカー選手としても活躍。ブラジル女子代表にも選出されたことがあるという。取材したことのある〝天才少女〟がロナウドと結ばれたのは素直にうれしいニュースだった。

 しかし、2004年に残念ながら破局した。理由はロナウドの度重なる浮気だったという。

 その後、ミレーネさんは母国に戻り、ロナウドとの間に生まれた息子のロナウジくんを立派に育て上げた。その息子は現在格闘家として活動中。日本で試合をするとの噂もある。

 一方、元夫のロナウドは引退後もスキャンダルばかり。機会があれば、激動の半生を過ごしたミレーネさんを20年ぶりにインタビューしてみたい。

(運動部デスク・三浦憲太郎)