【中畑清コーチの巻】

 第2次長嶋巨人の打撃コーチを務めたのが中畑さん。今では昨年まで務めたDeNA監督のイメージが強いかもしれないが、その人柄はもちろん、昔も今も変わらない。サービス精神旺盛で、とても人間味のある中畑さんには、駆け出し記者の自分も、たいへんお世話になった。

 当時は松井秀喜の入団直後ということで、打撃コーチの中畑さんには松井関連の取材が集中。自分の印象に残っているのは「松井、超大型スイッチヒッター転向か!?」という取材をしたときのことで、中畑さんはその可能性について大まじめに答えてくれた。

 こんなこともあった。取材中にメモを取りながら話を聞いていると「話をしているときはメモを取るな!」と怒られた。入社1年目の当時は「えっ、ダメなの?」と驚いたが、おかげで人との会話をスムーズに進めるためには、必要なことなんだと理解できた。今の現場ではボイスレコーダーでの取材が主流となっているが、やはり目の前で録音されながらの会話でホンネが聞けるわけがない。人と人との対話を大事にする中畑さんには、基本的だけど大事なことを教わった。

 巨人のユニホームを脱いでからも、巨人の監督問題が浮上するたび、自宅や電話で取材に応じてくれ「やりたい!」という気持ちをいつもストレートに打ち明けてくれた。結局“万年候補”のままで、巨人ではなくDeNAで監督をやることになったのだが…。DeNAであれだけファンに愛された中畑さんの監督ぶりには、巨人で再評価する声が上がったとも聞く。

 今季から若い指揮官が就任したこともあり、当面、巨人に監督問題が起きることはないだろう。だが、10年先か15年先かはわからないが、もし監督問題が起きたときには、また中畑さんのところに話を聞きに行きたいと思う。きっとまた「やりたい!」って言うだろうから。

(運動部デスク・溝口拓也)