少し前の話になるが、今年で25回目を迎えた「東スポ映画大賞」で綾瀬はるかの主演女優賞をはじめ、多くの各部門賞を受賞した是枝裕和監督の「海街diary」はサッカー界から熱い注目を浴びた作品だった。

 日本アカデミー賞最優秀作品賞にまで輝いただけに、そのクオリティーの高さはもちろんだが、あるシーンがサッカー関係者のハートをわしづかみにしていた。

 劇中で広瀬すず演じる浅野すず(綾瀬ら3姉妹の異母妹)が地元の少年サッカーチームに入るのだが、そこで見せたプレーが超絶もの。ドリブルで駆け上がり、前線の選手にスルーパスを出す姿が実にカッコいい。目線の置き方、重心のかけ方、カットインからのパスの出し方は、元日本代表MF中村俊輔(横浜M)をほうふつさせる。いや、俊輔は左利きなので、同じ中村でも今年2、3月の月間MVPに輝いた中村憲剛(川崎)のほうがよく似ているかもしれない。

 おじさん目線で少し褒め過ぎと言われると返す言葉がないが、広瀬のプレーは年配のサッカー記者だけでなく、現役選手の間でも話題になったという。

 この話には続きがある。広瀬はサッカーどころとして知られる静岡の出身だが、サッカー経験はなし。小、中学時代はバスケットボールをやっていたというが、そのシーンのために猛練習を積み、是枝監督の期待に応えた。これを見ていた次女役の長澤まさみが「さすが、サッカー王国出身だ!」と絶賛したという。

 長澤も広瀬と同じ静岡出身。父は元日本代表MFでジュビロ磐田の初代監督を務めた和明氏。幼少時は元日本代表FW中山雅史とも遊んでいたというサッカー一家で育った。

 メディアであまりサッカーの話はしないとはいえ、長澤のサッカーを見る目はヘタな記者なんかよりも肥えているはず(と思う)。

 その長澤が褒めたというのは、和明氏からも褒められているということ(と信じたい)。

 つまり、広瀬はサッカー界全体からお墨付きをもらったも同然。この時点でもうサッカーファミリーの一員になったと言っていい。

 ……少々強引な展開になったことはおわびします。美女に甘いという私に対する意見も謹んで受け入れます。

 ただ、日本アカデミー賞にも選ばれた映画でサッカーの話題が出てきたことは、サッカー記者としても何となくうれしいもの。おじさん記者たちが鼻の下を伸ばしながら映画を見ているのは別にして、これから長澤にも広瀬にも、もっとサッカーに関わってもらいたいというのは無理なお願いなのだろうか…。

(運動部デスク・瀬谷 宏)