セクシュアマイノリティー(性的少数者)は、人からどう呼ばれるのが本人的に一番しっくりくるのか。

 男性が好きな男性は「ゲイ」。近年は「おネエ系」というやわらかい表現もあるが、以前主流だった「オカマ」や「ホモ」は今や差別的と取られる。ただ内輪では自虐的にこうした昔の言い方を使う場合もある。

 女性が好きな女性、すなわちレズビアンは、長年「レズ」と略されてきた。だが近年、これも差別的な言い方で、当事者たちの間では「ビアン」が定着している。

 男性で生まれた女性、また女性で生まれた男性のように、心と体の性が一致しない人は「性同一性障害」とされる。だが「障害」という言葉が入るのには違和を感じる。

 男性から女性になった人々には「ニューハーフ」という呼び方が浸透しているからまだいいが、女から男になった人々は何と呼べばいいのか? 「オカマ」がそうであるように、「おなべ」という呼び名には差別的な意味合いが含まれる。

 そんななか当事者に、どう呼ばれるのが心地いいのか聞く機会があり、「FTM」という言葉を教えてもらった。「Female To Male」の略。すなわち心は男、体は女だが、女から男になるのを望む人という意味だ。

 聞けば、「FTM」にもいろいろいて、ホルモン投与や手術をしているか、また戸籍を変更済みかどうかは人それぞれ。その大半は性的対象が女性だが、教えてくれたその当事者は男性(ゲイ)が好きで、彼のような人たちは「FTMゲイ」と呼ぶそうだ。

“ゲイの聖地”東京・新宿2丁目のクラブで今月、ゲイとFTMのコラボイベントが開催された。これは2丁目史上初の試み。参加したゲイが振り返る。

「ゲイはゲイ、ビアンはビアンって感じで、人種が違うと行く店も違うしすみ分けができてるから、ああいうパーティーは画期的。雰囲気もすごくハッピーだったしね。FTMゲイの子から、前をタオルで隠して普通に銭湯行くとか、専用の出会い系サイトがあるとか、意外と性欲は強いとか、目からうろこの話も聞けたし…。最初はどう接していいか戸惑ったけど、お互いを知ることって大事だなって思った」

 性別は女性で体もいじってないため見た目は女性だが、心は男で性的対象はノンケ男性ではなくゲイだと昨年告白してくれた友人は、このイベントに行きそびれ後悔していた。「FTMゲイ」という言葉も、私から聞いて初めて知ったそうだ。

「誰にカミングアウトしても、そんな人に会ったことないと言われてきたし、もしくは理解されない場合がほとんどだったんだけど、実は同じような人がいたんだね。FTMゲイって存在があることが分かってうれしいよ。だんだんゲイ以外のセクシュアリティーの人も生きていきやすくなるといいね」

 新潟の市議(66)が先日、「オカマ」「正常な形でない人」と差別発言し叩かれた。年齢的にゲイを受け入れ難い世代なのは仕方ないが、ダイバーシティー(多様性)が声高に叫ばれるであろうこの先、いろんな価値観を持つあらゆる人種がどんどん表に出てくるだろう。それを差別する側もされる側も、お互いを批判するより前に互いを理解するところから始めないと、人間社会の質は上がらないのではないか。

(文化部デスク・醍醐竜一)