頭をそり上げた男が「すいません、僕、鉄拳なんですけど…」

2016年02月11日 12時00分

 ビートたけし本紙客員編集長が審査委員長を務める「東京スポーツ映画大賞」授賞式が、今年も近づいてきた。第25回となる今年は、2月28日に行われる。

 同時開催の「ビートたけしのエンターテインメント賞」も今年で16回目。もともと漫才師であるたけしは毎年、活躍した若手芸人を「日本芸能賞」として表彰しているが、その賞にほぼ毎年のように選ばれるのが、吉本興業に所属する若手芸人だ。

 だが、吉本興業は規模の大きさの割にマネジャーの人数が非常に少ないことで有名。実際に1人の芸人に対し、専属のマネジャーが付いているのは、ダウンタウンなどの超大物のみ。「日本芸能賞」を取るような若手クラスは、多くのコンビを1人のマネジャーが担当しているのが実情だ。

 このため東スポ映画大賞の授賞式に吉本所属の芸人は、マネジャーなしで来場することが多い。そのおかげで、現場が混乱したことが何度かある。2013年の「第13回ビートたけしのエンターテインメント賞」でカムバック賞を受賞した鉄拳がそうだった。

 吉本に所属する鉄拳のマネジャーは、もちろん数多くの若手を担当しているため、ハードなスケジュールで動いている。当日はその担当マネジャーも来る予定だったが、前の仕事が押しているのか、到着が遅れてしまった。

 私は吉本の広報担当幹部と一緒に鉄拳の到着を待っていたが、全く姿が見当たらない。しかもこの幹部も鉄拳の連絡先を知らなかった。それどころか、面識もないという。

 開演時間も迫り、焦る我々が「鉄拳はいつ来るんですかね?」「マネジャーが来るって言ってたんだけど」と会話をしていたところ、後ろから思いがけない声が。「すいません、僕、鉄拳なんですけど…」。振り返ってみると、見たこともない、髪の毛をそり上げた男がいた。実はこれが、素顔の鉄拳だったのだ。

 メークをしていない鉄拳の顔など分かるわけがないが、本人はかなり前からそこにいたらしい。マネジャーが到着しない上、幹部の顔も知らないので、そこに立ち尽くしていたところ、我々の会話が聞こえたため「僕、鉄拳なんですけど」と名乗ったのだ。

「あっ、鉄拳さんですか? ありがとうございます」とメーク用の鏡のある場所へ案内しようとしたが、「僕、特殊なメークだから、お湯がいる。ここではムリです」。結局、ホテル内のボイラー室のようなところでメークをしていた。

 今年も吉本所属の芸人が何人か選ばれているが、混乱せずに無事に終わることを祈りたい。

(文化部デスク・藤野達哉)