中国のお正月「春節(旧正月)」の大型連休が今週末から始まるが、近年はLCC(格安航空会社)の普及で、他の時期でも中華圏の友人たちがよく東京へ遊びに来るようになった。

 時々聞かれるのが、成田空港から東京までの移動手段。ここでの出費はみんな抑えたい。自分の経験から迷わず勧めるのは“1000円バス”。LCC専用の第3ターミナル(3タミ)直結で、リムジンバスや成田エクスプレス(JR)、京成スカイライナーより安い。また、これまで何度も利用しているが渋滞に巻き込まれたことがなく、約1時間で東京駅に着く。

 ただ、台湾・台北からの最終便、バニラ航空108便(JW108)の搭乗客がこのバスに乗るには、成田で急がなくてはいけない。飛行機の到着が遅れたらアウト。入国審査や税関でまごつくヒマはないし、預けた荷物が出てくるのをのんびり待っている時間もない。到着ゲートを出たらダッシュだ。

 急げば間に合う午後10時台のバスは10分間隔で出ている。終バスは午後11時10分だが、東京駅から先の目的地までの終電時間を考えたら、一本でも早いバスに乗りたいところ。

 先日、このJW108で来日した台湾の友人ハウ(32)をLINEでナビしたときは大変だった。私の感覚だと、台北は人の歩くスピードが東京より遅く(東京の3分の2ぐらい)、彼はその台北よりもっとスローライフで知られる台湾中部・台中に住み、しかも初めての東京一人旅だったからだ。

 まず事前に「荷物は預けず、なるべく少ない手荷物だけで。飛行機を降りたら走って」とアドバイス。「電車のほうが確実なんじゃないの?」と言うので、3タミから第2ターミナル(2タミ)まで歩くといかに遠いか教え、空港第2ビル駅(2タミ)のJRと京成の時刻表を送り、3タミ前からバスに乗るよう納得させた。

 出発前は忠告を無視して電車に乗りそうな雰囲気だったが、成田到着後、ハウは何とか1000円バスに間に合い、車内からLINEしてきた。次のミッションは、東京駅でバスを降りた後、民泊する高田馬場まで彼をどうナビするか。

 JRなら終電までまだ余裕があるが、広い東京駅構内で迷うかもしれないし、何より馬場まで時間がかかる。そこで、バス停近くにA3出口がある東京メトロ日本橋駅から、東西線に乗るという手。これなら馬場まで14分で、所要時間はJRの半分以下だ。

 で、ここでまたネックが。この1000円バスは「東京シャトル」と「THEアクセス成田」の2つあって、それぞれ東京駅でのバス停が違うのだ。東京シャトルなら、日本橋駅A3出口まで徒歩1分。一方のTHEアクセス成田はもうちょっと離れていて、3〜4分かかる。

 さて、ハウはどっちに乗ったのか? LINEで送ってもらったバスのレシート画像から、午後10時45分3タミ発のTHEアクセス成田と判明。東京駅着予定は午前0時5分で、これなら日本橋発午前0時23分の終電に間に合う。

 バスが到着するまでに、東京駅のバス降り場からA3出口までの行き方を地図付きで送った。生まれて初めての場所、しかも夜の東京駅前で確実に迷うと思いきや、スマホで「Googleマップ」を見てすんなり日本橋駅まで行けたらしい。駅のホームで上り下りどっちの電車に乗るかは迷ったようだが、無事ハウは終電の1本前に乗れて、その夜のうちに馬場に着いた。

 LINEでのやりとりは、お互いつたない英語。だが、ハウがスマホをローミングして、Wi—Fi環境がなくてもLINEできるようにしてなければ、オンタイムでナビできなかった。特に欧米圏から来日した友人などは、パケット代をケチってフリーWi—Fi利用できる滞在先のホテルでしかスマホを使わず、観光中は連絡が取りづらかったりする。

 これまで午後10時10分成田着だったJW108は、先月30日から運行時間が変更され、水木が午後10時、それ以外の曜日は午後9時20分台着と少し早くなった(3月26日まで)。これで1000円バスに乗る余裕は少しできたが、個人旅行の外国人がスムーズに旅行できるよう、官民がもっと細かい環境整備をしてくれないと困る。

(文化部デスク・醍醐竜一)