1月18日、イーグルスのオリジナルメンバーでありリーダーでもあるグレン・フライさんが亡くなった。“デビッド・ボウイさん死去”の衝撃に追い打ちをかけるように届いた訃報だった。

 今回は少々マニアック、かつ個人的思い入れの強いコラムになることをお許し願いたい。なにしろ、ロックを聴き始めた中学生のころ以来、イーグルスはずっと特別な存在だったのだから。

 フライさんの死を報じるニュースでは、ほとんどの番組でバックに「ホテル・カリフォルニア」が流れていた。まあ、イーグルスの代表曲のひとつではあるから納得できなくもないが、同曲はドラマーのドン・ヘンリーがリードボーカルを担当したもので、フライさんは主役ではない。ファンとしては、フライさんを追悼するなら彼がボーカルをとった曲を流してほしかった。

 イーグルスのシングルでは、約半数がフライさんのリードボーカル曲だった。例えば全米1位の「ニュー・キッド・イン・タウン」や「ハートエイク・トゥナイト」、2位の「いつわりの瞳」、そして記念すべきデビュー曲の「テイク・イット・イージー」など、ドン・ヘンリーには申し訳ないが、フライさんボーカルの特大ヒット曲だっていっぱいあるのだ。

 イーグルスは1982年に一度解散しているが、解散後のフライさんもソロアーティストとして「ザ・ヒート・イズ・オン」や「ユー・ビロング・トゥ・ザ・シティ」などのヒット曲を連発(いずれも全米2位)。ソロアルバムも、イーグルスの作品に勝るとも劣らない名盤揃いである。

 実は2012年にフライさんは「アフター・アワーズ」というソロアルバムを発表したが、これはジャズなどのスタンダードナンバーをカバーした企画盤で、オリジナル曲を集めた作品は1992年の「ストレンジ・ウェザー」以来、発表されていない。昨年、“相方”のドン・ヘンリーが15年ぶりのソロアルバムを出したこともあって、「次はいよいよグレン・フライ完全復活か?」と期待していたのだが、それもかなわぬ夢となった。

 再結成したイーグルスは昨年も精力的にコンサートツアーを行っていたが、フライさんを欠いてしまった今、活動を続けられるかどうかも難しくなっている。残ったメンバーでコンサートをしたとしても、それはポールとリンゴだけでビートルズを名乗るようなものだろう。だから、今度こそ本当にイーグルスは終わりを迎えるのかもしれない。

 ところで、フライさんの死をきっかけとしてイーグルスの曲をちゃんと聴いてみようと思っている方には、ベスト盤の「イーグルス・グレイテスト・ヒッツ1971―1975」をおすすめしたい。米国内だけで3000万枚近いセールスを記録(マイケル・ジャクソン「スリラー」に次ぐ全米歴代2位)したイーグルス最大のヒットアルバムだ。全10曲中7曲でフライさんが作曲に関わり、5曲でメーンボーカルを担当している。このアルバムを聴けばイーグルスにおける彼の重要性がよく分かるのではないだろうか。ちなみに「ホテル・カリフォルニア」は入っておりません。あしからず。

(文化部デスク・井上達也)