【ニュースのフリマ】現代ラグビー「フィジカル化」の果てに

2019年11月05日 15時17分

 炎鵬、石浦、照強より大きい。若隆景に体重でほぼ並び、身長で大きく上回る。ラグビーW杯で優勝した南アフリカの26歳ロック、ルード・デヤハーのサイズ(205センチ、122キロ)である。小兵幕内力士では大き目の若隆景(182センチ、125キロ)。力士はダッシュ力に優れるが、持久力は弱いとも言われる。ところがデヤハーらラグビー選手は80分の長丁場をプレーすることが少なくない。

 ラガーマンの肉体的進化は著しい。日本で「フィットネス」の重要さが広く認識されるようになったのは、松尾雄治率いる代表チームが敵地でウェールズを24―29と追い詰めた1983年の前ごろのことだった。

 当時の平均値は身長がFW180・6センチ、BK174・1センチ。体重はFW87・4キロにBK71・9キロだった。87年の第1回W杯で182・9センチと175・1センチ、96・5キロと74・9キロ。そして先のW杯では186・7センチと178・4センチ、109・4キロと89・6キロに。南アなどより大型選手は少ないものの、具智元や中島イシレリは若隆景級と言える。

 その肉体を厳しい練習で鍛えたことで、アイルランドやスコットランドにも接点等で負けず、驚くべきフィジカル面の進歩を世界に見せた。しかも計5試合という未知の世界に踏み込みながら、離脱するほどの深刻な負傷者は出なかった(マフィが若干痛んだが)。

 ゲームの「フィジカル化」も指摘される近年。今W杯でスコットランドは初戦の対アイルランドで2人の離脱者が生じ、相手側も負傷退場したCTBが日本戦でメンバーから外れている。

 開幕直後にはスポーツブログ「Betway Insider」に「今日のラグビー選手の著しい進化」と題する記事が掲載され、「猛烈なランニングからこん棒で打つようなスクラムまで。その間には激しいまでのヒット(衝突)がある」と激しさを浮かび上がらせた。昨年には、英週刊誌スペクテイターの電子版に「現代ラグビーの恐ろしい負傷の代償」なる記事も出た。

 フランスのプロリーグでプレーしたニュージーランド人FWの著書「傭兵の告白」(論創社)で当のジョン・ダニエル氏は、トレーニングによる体格とパワーの増大化とともに、個々の負傷が以前より深刻になっていることを挙げている。同国代表主将としてW杯2連覇に貢献したリッチー・マコウ氏は自伝(東邦出版)で「ゲームは年々フィジカルになる」と記した。

 日本は変則日程で来年からトップリーグが始まり、サンウルブズ最後のスーパーラグビーが2月に開幕、7月には日本代表のイングランド戦という過密なスケジュールに直面する。

 前出の著書でダニエル氏は「スピードとパワーが増大するにつれて、選手間の衝突で放たれるエネルギー量も増大し、そうした衝撃に対して筋肉がある程度までは緩衝役を務めてくれるが、残る体の部分―とくにひざや肩の関節―は無防備に等しい」と指摘。これは、大型化と取り口のシンプル化を背景に、けが人が絶えない大相撲で見られる光景だが…。

(渡辺 学)