【ニュースのフリマ】日本ラグビー〝新常態〟とその先

2019年10月21日 12時46分

 例えればテニスの錦織圭か。大きくない体でフルセットも珍しくない長丁場を戦い、身をすり減らしながらツアーで優勝を重ね、グランドスラム大会で決勝進出も果たした。ラグビーのW杯日本代表は優勝したわけではないが、出力ギリギリの領域で快進撃を続け、敗れた準々決勝の南アフリカ戦では肉体・精神ともに極限に達していたのかもしれない。

 田村のキックパスが、ボールを追うリーチと合わなかった場面。テレビ映像では、リーチにもう一足あればボールに触れそうにも見えた。その後のハンドリングミスやカバーディフェンスの足取りを見ても、「疲れ」の2文字が筆者の頭には浮かんだ。それはリーチだけではないと思われる。

 4勝1敗で4年間のキャンペーンを終えた今W杯。5試合のうち日本が先に得点できたのはサモア戦のPGのみで、あとはすべて先制トライを許している。アイルランド戦以外の3試合は、前半5分前後という早い時間帯に失点。そこから挽回してきたのは地力の証明であり、心身の消耗度も大きかったことだろう。

 今回は中3日や4日の試合はなく、恵まれた日程だったとはいえ、限界状態の戦いが続けば、5戦目にもなれば、ひそかに蓄積したダメージにむしばまれる。スコットランドはロシアに対して先発14人を入れ替え、ボーナスポイントつきの勝利を挙げた。アイルランドも11人を代えてサモアに同様の勝利。いずれも日本に屈したが、こうした〝芸当〟は日本にはまだ無理ではないか。

 24年ぶりの勝利を挙げた前回大会、「強豪国とW杯で普通に接戦している」と驚きの声が報道関係者から聞かれた。今回、アイルランド撃破後に「もう奇跡とは言わせない」との言葉が飛び交ったように、日本ラグビーの水準アップが確実になったことは間違い。いわば中国経済で使われるところの「新常態」(本来はネガティブ的な意味のようだが)に達したと言える。

 1980~90年代のラグビー人気黄金時代には「テストマッチより早明戦」という、ある種いびつな空気もあった。それもW杯この2大会で一変。これもまた新たな常態と化した。

 とはいえ、初めて遂げた世界8強を常態化するには、前出のスコットランドやアイルランドのような層の厚さを含め、教化・改善点は少なくないだろう。 (渡辺 学)