【ニュースのフリマ】トランプ氏安保発言と安倍ファミリーの因縁

2019年07月01日 14時42分

 自分のことしか興味なさそうなドナルド・トランプ米大統領も、「岸信介」の名前ぐらいは聞き覚えがあるだろう。

 日本の歴代総理の名を知らずとも、盟友・安倍晋三首相とフロリダで初めてゴルフをした2017年当時、日米首脳ゴルフの前例として安倍氏の祖父である岸首相とアイゼンハワー大統領がラウンドした60年前の故事とともにその名を教えられていたのではないか。

 その岸氏が政治生命を賭して行った60年の日米安保条約改定は、世論の猛反発を呼んだ一方、不平等条約を「是正」したとの一面も指摘されている。ムック「孫崎享の真実の戦後史!」(2013年、徳間書店)も、国民的反対運動に触れつつ「その実態は旧安保よりも日本に有利な改定だった」としている。

 52年に発効した旧安保条約の名称が「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約」なのに対し、60年安保は「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」。つまり「相互協力」の文言が入った新安保は「日米の相互協力がうたわれている」と孫崎氏は指摘した。

 旧安保では米国が日本国内に軍を配備する権利を認める一方、日本防衛の義務は規定されていなかった。そのため問題視された「片務性」が、60年の改定により義務が明記され解消したと言われる。

 かねて米軍の日本駐留にまつわる「不平等」をカネの面から叫んできたトランプ氏は、ここにきて破棄の可能性にまで言及。盟友の祖父が「不平等」を解消した現行安保に、米側の(というより自分の)理屈で片務性を訴えてきたことになる。

 これを解消するには日本も米本土防衛の義務を負うのが、筋論としては一番。平時でも米軍の艦船などを守る「武器等防護」は件数が増えていると報じられたが、トランプ氏はそれでは満足していないようだ。とはいえ防衛義務の片務性解消にこだわるなら、米国土に日本軍を駐留させることになるが、逆に米国民の反発を招きかねない。

(渡辺 学)