【ニュースのフリマ】レスリング28年前の因縁の代表争い

2019年06月24日 15時09分

 勝者と敗者の明暗が残酷なまでに分かれる一戦は、サッカーの入れ替え戦のように異様なまでの盛り上がりを見せることがある。これからのイベントで言えば、9月のレスリング世界選手権(カザフスタン)代表の座をかけて7月6日に開催されるプレーオフだ。

 大会での成績が来年の東京五輪代表の座にかかわるとあって、是が非でも確保したい世界選手権切符。その代表決定戦カードの一つに、五輪4連覇の伊調馨(35=ALSOK)とリオデジャネイロ五輪女子63キロ級覇者川井梨紗子(24=ジャパンビバレッジ)が激突する女子57キロ級があるから、注目度はますます高まる。

 ともに至学館大出身で栄和人氏の薫陶を受けた両者。栄氏による伊調へのパワハラ問題で、取り巻く状況が変わってしまった。伊調を指導する田南部力コーチと栄氏はパワハラ告発をめぐって法廷で争い、日本レスリング協会強化本部長を退き大学から去った栄氏は至学館の学外コーチとして川井らへの指導を再開したという。いわば指導者間の遺恨マッチの様相も呈しているのだが、栄氏は自身も苛烈な代表争いを経験していた。

 バルセロナ五輪につながる1991年の世界選手権代表の座をかけた大会の一つ「ワールド・チャンピオンシップ・チャレンジカップ」。フリー62キロ級決勝で栄氏は6歳年下の安達巧氏と対戦した。ともに鹿児島商工(現樟南高校)、日体大出身の同門。当時の男子では複数の階級で名勝負と言われるライバル関係が見られ、栄VS安達も屈指の好カードとして人気を呼んでいた。

 ソウル五輪出場、女子の指導も始めるなど実績十分の栄氏に対し、90年北京アジア大会を制した成長株の安達氏。対安達7戦全勝の栄氏が1対0で勝ったが、安達陣営から「栄の腕や肩がヌルヌルしている。油を塗ったのでは」とクレームがつけられた。栄氏は「汗だ」と主張し、審判も安達氏サイドの見解を受け入れなかったが、同氏は納得せず、後味の悪さが残った。

 だが結局、ブルガリア・バルナで開催された世界選手権に出場したのは安達氏。栄氏はスパーリングパートナーとして現地へ。翌年の五輪代表の座も安達氏が勝ち取るまで、両者の因縁はメディアをにぎわせた。その安達氏が昨年、パワハラ問題で栄氏を追及する側に立ったのも因縁めく。

 関係者のみが会場に入れ、一般向けにはテレビ中継を行うという今回のプレーオフ。どんなドラマが生まれるのか。

(渡辺 学)