【ニュースのフリマ】貴景勝の再出場・再休場と公傷制度

2019年05月22日 14時06分

 本サイトのリニューアル以前に当欄に記した、大相撲の再出場傾向。夏場所の貴景勝は大関として異例だったが、復帰当日の黒星で再び休場に追い込まれたことでなおさら物議を醸した。

 ヒザの負傷で全治3週間と診断されながら、痛みが引いたとして出場。相撲に限らず、けがを抱えて競技を続けるアスリートは少なくない。その意味で今回の貴景勝の再出場は良く言えば「プロ根性」だが、結果論的に考えれば「判断ミス」の批判は免れない。

 一昨年九州場所からこの夏場所まで、再出場や途中出場の力士は延べ10人。毎場所1人という計算になる。貴景勝以前には今年初場所、当時小結の御嶽海が初日からの連勝が5で止まった一番でヒザのあたりを故障し、不戦敗を含めて5日休んだ後に土俵に戻り、3勝2敗の星を残して通算8勝を挙げている。関取の再出場と再休場は、昨年秋場所で平幕の旭大星が5日休んで復帰し、2番取ってまた5日休場した例がある。

 異例の再出場といえば貴景勝のかつての師匠・元横綱貴乃花が2003年初場所で前例を残し、その場所途中で引退。同年の記録を見ると、関取の再出場は4人。02年にさかのぼっても延べ4人。昨今、再出場が急増したわけでもなさそうだが、当時と現在の違いは公傷制度の有無。

 02、03年当時の星取表で目につくのは「公傷」の2文字。場所中に負傷した力士を救済する同制度は1972年に始まり、03年限りで廃止された。負傷により途中休場した力士は翌場所に番付が下がる(7勝以下の場合)が、公傷認定を受ければその場所を全休しても番付が保たれる。一方で02年秋場所のように3人がこの制度で全休という事態も生じ、適用が厳格化された末、廃止に至った。

 昨今の再出場は「番付1枚」に命をかけてのことなのか、休場のとらえ方自体が〝軽く〟なったことの反映なのか。力士の大型化と負傷リスクの問題とともに、相撲協会は公傷制度と併せて検討すべきではないか。

 そもそも、協会の職務分掌を見ると、他の競技団体にあるような「医科学委員会」がない(相撲協会診療所がその役割を果たしているのか?)。部屋任せにも感じさせてしまうが、一定の医科学データを共有した上で、けが防止策や制度を打ち出すなどしてもいいのでは…。

(渡辺 学)