【ニュースのフリマ】京マチ子さんの「隠れた珠玉」2本

2019年05月15日 14時42分

 心不全のため12日に95歳で死去した往年の大女優・京マチ子さんについては「グランプリ女優」の異名とともに、海外で最高賞に輝いた「羅生門」や「地獄門」、一番は逃したがベネチア映画祭で銀獅子賞の「雨月物語」などの出演作が各メディアで紹介された。

 興味深いのは、2015年に早大で故人の展示会と併催された「京マチ子映画祭」で上映された本人セレクトの7本に、前出の作品群が含まれていなかったことだ(著作権等の関係で希望しても上映できない作品があったのかもしれないが)。7本は以下の通り(当時の上映順)。

「甘い汗」(1964年=豊田四郎監督)
「赤線地帯」(56年=溝口健二監督)
「夜の蝶」(57年=吉村公三郎監督)
「流転の王妃」(60年=田中絹代監督)
「浮草」(59年=小津安二郎監督)
「足にさわった女」(60年=増村保造監督)
「濡れ髪牡丹」(61年=田中徳三監督)

 自選の基準は不明。監督ももちろんだが、共演男優も佐田啓二、船越英二、川崎敬三、市川雷蔵らバラエティーに富む。おおむね共通しているのは「大家族を支えるたくましい母」(甘い汁=イベント案内文より、以下同)、「たくましく生きる奔放な現代的女性」(赤線地帯)、「銀座のバーを経営)、「女スリ」(足にさわった女)といった、強いイメージを抱かせる役柄だ。

 そうした女性像とは異なるイメージを喚起するのが、100本ほどのフィルモグラフィーにおいて「名作」ではないかもしれないが、珠玉のような2本、「婚期」(61年=吉村監督)と「沈丁花」(66年=千葉泰樹監督)も見逃せない。

 いずれもホームコメディー。「婚期」ではダメ亭主(船越)との間で倦怠期状態の妻が、同居する夫の妹(若尾文子、野添ひとみ)に冷たくされる「兄嫁」モノ。生活に疲れた主婦が、絶品演技を見せる北林谷栄の婆やに「奥様、腰巻きが出ています」と言われて赤面するシーンが何とも言えない味を出す。4人姉妹の長女(ほかに司葉子、団令子、星由里子)を演じた「沈丁花」では“行かず後家”(もはや死語というか差別語か)になりかかった歯科医に。仲代達矢演じる教授との結婚を予感して顔を赤らめる場面は、当時42歳とは感じさせないかわいらしさをにじませた。

 京さんが旅立った12日は、くしくも最後の映画出演作「化粧」(池広一夫監督、松坂慶子ら出演)が35年前に公開された日でもあった。

(渡辺 学)