【ニュースのフリマ】改元“ショー”のうまみとツケ

2019年05月03日 16時07分

 そもそも、この形式をおそらくは望んでいなかっただろうから、うれしい誤算なのか、痛しかゆしなのか…。安倍晋三首相の胸中だ。

 弊紙も含めてだが、騒いでいるメディア側も内心は驚く「令和」フィーバー。某夕刊紙によると経済効果は3兆5000億円というから、五輪レベルに及ぶ。それもこれも、生前退位が可能になり、おめでたムードに包まれての改元となったから。皇位継承は崩御に伴うものとする神道関係者や保守派政治家・文化人らは退位に否定的で、思想的には保守派を支持基盤とする安倍氏もこれに通じるところがあったに違いない。

 ところが、平成までは粛々と行われてきたであろう改元が、あらかじめ予定されたことで一大イベント化する現象が生じた。官房長官が「新元号おじさん」(本物のおじさんは考案者のはずだが…)と呼ばれたのは平成同様だが、安倍氏が自ら会見まで開き、肝いり政策「1億総活躍」と典拠の万葉集を重ね合わせるようなメッセージを発することもできたのだからオイシイ。大阪ダブル選や衆院2補選での自民敗北ショックも吹き飛んだことだろう。

 新元号発表は議論の末に皇位継承の1か月前となったが、当初模索されたように発表がより早い時期だったら、経済効果は拡大していたかもしれない。

 その発表時期についても、国民生活への影響から早めを期す官邸側と、本来なら即位後にすべきとする保守派の間にあつれきが生じ、間に立った首相が保守派に配慮したとも一部で報じられた。

 今回の退位が議論になった際、反対論拠の一つが「皇位継承が時の政権の意向に左右されかねない」というものだった。改元の「うまみ」を目の当たりにした政治家が、景気刺激イベントとして退位を迫る…。退位は特例法に基づくもので今回限りとされているが、いずれ改元“ショービジネス”をもくろむ勢力が出現しないとも限らない。

 自民党総裁の任期からあと2年は政権の座にいられる安倍氏にとって、メリットが大きかった天皇退位に伴う皇位継承。一方で保守派の不興を買った一面もあり、コアな支持基盤にヒビが入る恐れもある。

 北方領土問題では「4島返還」「不法占拠」などの常とう句を封印してしまい、その真意が取りざたされている。あるいは保守派が葬りたい慰安婦問題に関する河野談話にしても、政府としては踏襲せざるを得ない…。コアな支持層が揺らぐというツケも、令和フィーバーの祭りの後に回ってくるかもしれない——。(渡辺学)