【ニュースのフリマ】小出監督の冷や冷やジョーク

2019年04月26日 15時16分

 亡くなった陸上競技指導者・小出義雄監督の言葉で、書けなかったものがあった。

「Qちゃんを○○へ売り飛ばしちゃうか」

 シドニー五輪マラソン女子で金メダルを獲得した教え子のQちゃんこと高橋尚子さんとともに参加した講演で、東京・岸記念体育会館でスポーツ関係者を前にしたスピーチで。計2回耳にした。同五輪が終わって間もないころのことだった。

 監督が私財を投じ、高地トレーニングのために米コロラド州ボールダーで家を買ったことは死去に際してほとんどの新聞で伝えられた。それにまつわるエピソードは講演ネタの定番になっていたようだ。

 千葉・佐倉の自宅を担保に借金すると、業者が家の価値鑑定にやって来て、スケールでいろいろ測り始めて家族がビックリしていた話など、面白く語っていた。そして、もし返済に困ったら「Qちゃんを…」という発言が飛び出した。

「○○」は某風俗街の俗名。もちろんジョークで多少の笑いを呼んだような記憶があるが、人によってはお下劣と受け取ったかもしれない。聞いていて冷や冷やしたが、結局、話の流れが女性軽視であるというわけでもなかったので記事で取り上げはしなかった。他の媒体も報じていない。

 とはいえ、現在、これが公の場で著名人に語られたら物議を醸すことだろう。当時でも、あえて書いて問題提起するやり方もあったのではとの思いは残る。

 2015年、教え子の五輪2大会メダリストの有森裕子さんと「がんサミット」のトークイベントに出席した際も、こんなジョークを回顧していた。1992年バルセロナ五輪で有森さんにメダルを取らせるため、監督は願掛けとしてたばこを一時断った。その気持ちに応えようと、有森さんは監督の好きなショートホープをランニングパンツに縫い付けて走り、銀メダルに輝いた。

 監督は「あとで有森に言ったんだ。『ショートホープになりたかった』って。そうしたら怒られたよ」。この回顧談に有森さんは「私は遠慮しておきます」(笑い)。
 
 酒にたばこ、下ネタも好きな、愛すべきキャラクターを失った。

(渡辺 学)