【ニュースのフリマ】「令和」をめぐる奇妙な符合

2019年04月22日 14時39分

 すでにインターネットなどで話題になっていた新元号「令和」に対する品田悦一・東京大学大学院教授の考察が、先週末発売の「短歌研究」5月号に掲載されている。

 令和の出典は万葉集の巻5にある梅の花を歌った32首の序文の一節とされる。大伴旅人が開いた宴を彩る情景の記述が序文だが、品田氏は序文の全体および32首とその後に続く歌、さらには序文が取り込んだ漢籍も含めて重層的な構造から旅人のメッセージを浮かび上がらせる。

「『権力者の横暴を許せないし、忘れることもできない』という、おそらく政府関係者には思いも寄らなかったメッセージが読み解けてきます」

 かなり痛烈な指摘である上に、ダメ押しも。令和と決断したとされる安倍首相は、万葉集が国書であるのみならず、天皇から貴族、防人、農民まで幅広い階層による歌が収められていることも重視したという。品田氏は「この見方はなるほど30年前までは日本社会の通念でしたが、今こんなことを本気で信じている人は、少なくとも専門家のあいだには一人もおりません」とバッサリ。

 そんな意味合いも背景にある令和でさらに興味深いのは、考案者とされる中西進氏と、決めた人間である安倍首相の気脈が通じているかのような一面だ。

 中西氏は17日の読売新聞インタビューで、令和の「和」について「聖徳太子が作った17条の憲法の第一条『和をもって貴しとせよ』を思い浮かべます」と語った。一方、安倍首相について同日の毎日新聞・与良正男氏の夕刊コラムは、「首相は揮毫(きごう)を求められると、よく『以和為貴』と書く。聖徳太子の17条憲法1条にある『和をもって貴しとなす』である」とのエピソードを紹介している。

 安倍首相は当初絞り込まれた新元号候補に満足できず、追加案を求めた中に令和があったと報じられた。まさか中西氏の案を期待して絞り込み案にダメ出ししたのか…。

 中西氏が文化勲章を受章した2013年は安倍政権下の時代。授与候補を推薦する役割の文部科学相は、保守思想で首相と通じる下村博文氏だった。これもまた因縁めいている。

(渡辺学)