2000年代、甘いマスクと重厚なタテ脚でGⅠ戦線をにぎわせた松永晃典(45=静岡)が28日、松戸ミッドナイト競輪の前検に姿を現した。昨年7月静岡の開催を途中欠場してから、実に187日もの日にちが経過している。

 静岡の開催はヘルニアで欠場。腰の具合がよほど、良くなかったのか…。「ずっとレースで力が入らない感じで、ヘルニアも持っていたのでね」。ただ、ヘルニアだけではないような不可解を感じる中「息苦しさもあった」。何かが、おかしい。

 病院で診断してもらったところ「脈が上がらない症状でした。130以上、上がらなくて。心房細動という病名でした」と原因が分かった。選手としてやっていけるのか、この先、どうなるのか…。医者からは「手術をして、3か月は走れないよ」と言われたという。しかし、下を向く気持ちは一切なかった。

 ある男の存在が頭に浮かんだ。76期の同期生である島田竜二(46=熊本)だ。島田は2017年7月、街道練習中に心筋梗塞で倒れた。だが、適切な処置と本人の根性で奇跡の復活。S級優勝できるところまで戻り、今も元気な走りを見せている。輪界一の太鼓腹をさすり、揺すらせながら、奮戦しているのだ。

「同期の島田も同じ心臓の病気と闘っているからね。オレも頑張らないと。体がせっかくもう一回、チャンスを与えてくれたんだし」

 はにかむような笑い顔は強かった時と変わらない。「今はもう体調もいい」。早期発見できたことで、大きな影響は残っていないそうだ。かつてはGⅠの決勝にも勝ち上がり、どんなレースでも、ゴールまで戦い抜く姿勢を示していた。

 松戸ミッドナイト競輪の初日(29日)6R。ここから、松永の新たなストーリーが始まる。

☆前田睦生(まえだ・むつお) 九州男児。ヘアスタイルは丸刈り、衣装は吊るしのスーツで全国各地の競輪場の検車場を闊歩している。日頃の不摂生を休日の多摩川土手ランニングでなんとかしようとしている姿の目撃情報多数。