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プロフィール
渡辺学
1986年入社。ゴルフ担当を経て89年からテニス、ラグビー、アメリカンフットボール、アマチュアレスリング、陸上、水泳、サッカーなどの取材に携わった。五輪は夏季2回、冬季3回を現地取材。2001年に運動部デスク、06年から文化部で社会面デスクを担当後、専門委員などを経て現在法務広報室長。早大卒。
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大河ドラマで語られた「ドランドの悲劇」
2019年01月11日

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 6日に始まったNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」で目をひいたのは、「体育」と「スポーツ」を対比させたこと。くしくも2020年東京五輪・パラリンピックを2年後に控えた昨年、かつて「アマチュアスポーツの総本山」と言われた日本体育協会が日本スポーツ協会に改称している。

 ドラマ序盤、1912年ストックホルム五輪参加の打診を受けた、役所広司演じる東京高等師範学校(現筑波大)校長の嘉納治五郎(後に日本初の国際オリンピック委員会=IOC=委員)が、過去の五輪の写真を一緒に見た助教授の可児徳(古舘寛治)から「楽しそうですね」と写っている光景について水を向けられると、「これがスポーツだよ」と答える一幕がある。スポーツは楽しいとのメッセージが浮かび上がるが、五輪参加の機運を高めたい嘉納に、教授の永井道明(杉本哲太)は「論外ですな」と断じる。

 なおも「楽しいの?五輪は」とたたみかける嘉納に、08年ロンドン大会を現地で見たという永井は「体も心も未熟な若者に一国の命運を託するという意識が何を生むか。私が見た光景はドランドの悲劇と言われ、語りぐさになりました」と返す。画面はロンドン五輪マラソン(当時は男子のみ)のゴール実写映像に切り替わり、フラフラになったドランド・ピエトリ(イタリア)の姿が映し出された。

 スポーツ・イラストレイテッド誌の「夏季五輪完全本」(1996年版)によると、7月24日に行われたマラソンは56人が参加し、ジョン・ヘイズ(米国)が2時間55分18秒4で優勝。ドランドは2時間54分46秒4ながら失格とされている。ドランドは先頭を切ってゴールのあるスタジアムに入ったが、見るからに意識もうろう。あさっての方向へ向かおうとするのを競技係員がフィニッシュラインへと導くも、この間、倒れては起き上がり、また倒れ…。観客は騒然。後続がスタジアムに入ってくる中、あとわずかの距離で5度目の転倒後、競技運営責任者に体を抱えられてラインを越えた。レース中に第三者の助けを借りるのは規則違反。

 2番目にフィニッシュしたヘイズがドランドの1位扱いに抗議し、認められ金メダリストに。するとドランドは「放っておいてくれれば自力でゴールできた」と主張するも、命の危険も感じられ、放置できない状態だったと大会の競技報告書には記されたという。失格となったドランドだが世の中の同情を呼び、マラソン人気も巻き起こす。ヘイズともども好待遇でプロとして勧誘され、2人の「対戦」が五輪4か月後と翌年に実現。いずれもドランドが勝ったが、両者ともプロとして稼いだ。

 国際陸連が設立される1912年以前の出来事。ドランドのレース詳細や五輪後については大河ドラマで触れられていないが、スポーツで金銭まで得ていたとなれば、前出の永井ら「体育」派は怒髪天と化したに違いない。

 実に現在に至るまで続く「体育」と「スポーツ」の価値観論議。「いだてん」で嘉納は、日本体育会の加納久宜会長(辻萬長)にも協力を断わられ、揚げ句に「スポーツなどくだらん」と一喝される。「ナニっ!」と色をなすと、相手は「体育です。体育は教育。一部のわずか数名のエリートが技を競い合うスポーツなどに意義を感じません」と言い放った…。

 嘉納の奔走から110年あまり。嘉納を初代会長とする日本体育協会は「名称変更趣意書」によると、設立当時は「体育という言葉はスポーツを含むという広義の意味を持つものと理解され、使用されてきた」。だが、64年東京五輪を契機に「スポーツ」が多様される時代が訪れ、競技のみならず健康維持のための運動なども含め「体育や身体活動の概念を包摂しているものと考えられるようになった」と状況の変化を指摘する。ちなみに同協会の「体育」とは、「嘉納の考える『体育』であり、スポーツを含むという広義の意味を持つ言葉として使用されてきた『体育』の概念である」というから、ドラマの印象とは若干異なる。

 「悲劇」が追い風になったドランド。4年後、「いだてん」主人公の1人が今度はとんでもないエピソードを生むことになる…。







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