東京医科大で明るみに出た入学試験における女性受験者一律減点は、医療業界内では同大に限らない一般論として“知る人ぞ知る”疑惑だったらしいことが、このところの報道で関係者によって語られている。不正うんぬんは別として、一般社団法人日本女性医療者連合のホームページを見ると、昨夏に「女性医師を『増やさない』というガラスの天井」と題して、女性の医学部合格率の低さなどを指摘している。
女性は結婚・出産を機に仕事を離れるケースが多いため入学者を絞りたいというのが東京医大の言い分だというが、女性医師に対する冷たい視線はこれまたこの大学の枠を超えて“共有”されていることがうかがえる。とりわけ外科医。8日発行の本紙社会面記事にも、女性医師を「増やせ」「減らせ」という声がある中で、「減らせ」と言われるのは「外科などで言われる話」という大学病院関係者のコメントが紹介されている。7日の毎日新聞朝刊には、国立病院の女性医師が学生時代、「外科に女はいらない」と言われたというエピソードが掲載された。
外科医といえばテレビ朝日系ドラマ「ドクターX」のヒロイン大門未知子。明英医科大医学部医学科を卒業し、東帝大医学部の外科医局を経てキューバに留学、腕を磨いてフリーになったとの経歴がネット上でみられる。「私、失敗しないので。」が決めゼリフの女医は学生時代も、女子受験生に対する一律減点があったところで、影響が及ばない成績で難関をくぐり抜けたのか。
昨秋シリーズは、大門がキューバらしき地で学生に講義を始めるような光景で幕を閉じた「ドクターX」。国民に対するキューバの手厚い医療ぶりは広く知られている。日本外務省のサイトではキューバ医療事情について「中南米諸国の中では医療先進国に位置づけられている」との紹介がなされているが、世界保健機関(WHO)の2010年データによると、人口1000人あたりの医師数は世界2位。女性医師に対しては、仕事がしやすい環境づくりが行われているという。
仮に新シリーズが放送される場合、前シリーズのエピローグを受けてキューバの医療体制の話から入り、日本の医師養成問題に切り込むといった設定に、大門の医師志望時代を回顧させればそこそこのストーリーになるのでは。
