プロフィール
須山浩継(すやまひろつぐ)
1963年広島県出身。大学卒業後、5年間のサラリーマン生活の後に「趣味で食えたらラッキー」と、プロレス&格闘技を主に取材対象とするフリーライターに。 プロレスに関してはもっぱらインディー系と女子が専門分野で、メジャー団体や選手の取材経験は非常に少ない特殊マスコミ。 現在はサムライTVの怪番組「インディーのお仕事」の企画構成、大日本プロレス中継の解説などを担当。




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ダイビング・フットスタンプ
2012年07月20日

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ダイビング・フットスタンプという技があります。コーナーポストに登って両足から相手の体に飛び降りるという、まことにもって単純明快な技です。コーナーから飛び降りる落差に加えて、ヒザの屈伸によるエネルギーも加えることができる上に、全体重が両足の裏という比較的狭い面積にかかるので威力は抜群です。

単純な技ではありますが、この技が定着したのは比較的最近です。昔、ディック・ザ・ブルーザーが必殺技として使っていた、アトミック・ボムズアウェイという聞くだに強烈な名前の技があり、同じようにコーナーから飛び降りて相手を踏んづける技でしたが、こちらは相手に投下するのは片足だけ。両足を投下する形が一般化したのは90年代以降でした。

非常に単純な技で誰でもできそうな気もするのですが、選手に聞いてみたところ物理的に強力な技であるがゆえに、一般に思われているよりも高度な技術が必要とのこと。要するに相手に大きな怪我をさせずに3カウントを奪うためには、命中させるポイントが非常に狭いらしいのです。

顔面や頭に全体重をかけた足を落とすのは、下手をすれば命に関わる大怪我に直結します。肋骨や鎖骨のあたりに落下しても骨折に至る可能性がありますし、腕や腰より下でも当たりどころによっては大きな怪我を負わせてしまいかねません。プロレスラーにとって一番恥となるのは、相手に必然性の高い大きな怪我を負わせてしまうことです。

そうなると投下可能なポイントは一般には相手の腹部のみになります。相手の腹部へ正確に投下するには両足を閉じた状態でのヒットが求められますし、試合後半でダメージを負い息も上がった状態で、正確にポイントを絞ったヒットを狙うのは、見ている側が考えるほど簡単なことではないようです。

ただ、私個人の好みで語らせて頂ければ、あまり好きな技ではありません。最大の理由はずるいように思えるからです。コーナーから一撃必殺を期して放つ技の大半は、技を繰り出す側も大きなリスクを抱えています。当たれば大きな威力を発揮する落下エネルギーが、かわされた場合には自分の肉体に襲い掛かってくるからです。そんな肉を切らせて骨を断つイチかバチかの刹那的な美学も、コーナーからの落下技の大きな魅力だと思うのです。

ところがダイビング・フットスタンプはかわされても両足から着地するだけです。もちろんヒザや足首に故障を抱えている選手にはキツイでしょうが、少なくとも健康な一般成人であれば、コーナーの高さから飛び降りても大きな怪我を負うことは稀でしょう。逆に言えばローリスク・ハイリターンの極めて合理的な技なのですが、私にはダイビング・フットスタンプからはプロレスならではの美学が感じられないのです。

先日、ある選手が「生き残って定着していく技は必ず道理に合っているんですよ」と語っていました。そういう意味ではダイビング・フットスタンプも道理には合っている技です。しかし道理に合い過ぎているところが、プロレスというジャンルにおいては、逆に欠点なってしまうのかもしれません。実際、超一流と評価される選手で、この技を決め手に使っている選手はほとんど見当たりません。

プロレスの歴史の中では比較的新参者であるこの技が、たとえば10年後にどんな位置づけをされているのか?こういうことを長い期間をかけて観察していくことも、プロレスの楽しみ方の一つなのかもしれません。




※こちらとは別に「須山浩継伯爵の身勝手日記」(http://blog.livedoor.jp/hirotsugu1069/)というブログの方もご愛読頂ければ幸いです。またhirotsugukunというアカウントでツイッターもやっております 。



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