【侍ジャパン】77歳の権藤コーチ「大ハッスル」の理由

2016年11月09日 16時30分

菅野(左)らに語りかける権藤コーチ(右)

 来春に第4回WBCを控える野球日本代表の侍ジャパンが8日、QVCマリンで練習を行い、10日からのメキシコ、オランダとの強化試合(東京ドーム)に備えた。連日調整を行う中、チーム内で精力的に動き回っているのが権藤博投手コーチだ。来月2日で78歳を迎えるが、ここまで高齢を感じさせないフットワークの軽さで投手陣たちと密なコミュニケーションを取り続けている。球界屈指の77歳名伯楽が大ハッスルする理由とは――。

 その手腕は“ゆとり世代”にも、おおむね好評のようだ。権藤投手コーチはこの日、合宿3日目で初めてブルペン入りした菅野智之(巨人)を入念にチェック。全40球を投じた右腕に要所で助言も送った。権藤コーチは「簡単に言うと、ボールを手前で『ドーン』と離せというぐらい。伝えたのはシンプルなことだよ」。名伯楽からの直接指導は当人の心に強く響いたようで、練習後の菅野はこう打ち明けた。

「権藤さんから(アドバイスされた点)は『いかに力を抜きながら投げるか』ということですね。緩い球を投げるわけじゃなくて、いかに力を抜きながらキレのある真っすぐを投げるか。これまでもやろうとしていたことなんですけれど、これがなかなか難しい。権藤さんに教えてもらった感覚はすごく参考になります。チームに帰ってからも試していきたい」

 かつて佐々木主浩(元横浜、マリナーズ)や吉井理人(元近鉄、メッツなど)、阿波野秀幸(元近鉄、巨人など)ら数々の名投手を育成。その経歴は侍ジャパンに招集された主力投手たちからも当然一目置かれている。前日7日に菅野同様、ブルペンで投球に関するレクチャーを受けた藤浪(阪神)も「面白い話もしていただきましたし、いい経験をさせてもらいました」。9日にブルペン入りする予定の大谷(日本ハム)は早くも「権藤さんが感じたことを言ってもらえればいい」と直接指導が待ちきれない様子だった。

 それにしても喜寿とは思えない軽快なフットワークで連日にわたり、侍の主力3投手である大谷、菅野、藤浪と積極的にコミュニケーションを取ろうと試みるハッスルぶりは驚異的だ。権藤コーチが動き回る理由には、侍ジャパンの抱える最大の懸念材料を解決に導くための深謀遠慮がある。

「“ストッパー問題”の解決です。現在の日本球界で日本人の絶対的な抑えがいない中、首脳陣は本番のWBCでは本来ならば先発メンバーである大谷、菅野、藤浪の3人からストッパーを選び出すことも視野に入れている。3人と距離間を縮めてしっかりと信頼をつかんでおけば、たとえ本職でない抑え転向を言い渡したとしても嫌な顔はされにくい。今から“根回し”していこうというのが狙いでしょう」(チーム関係者)

 権藤コーチは抑えについて「3月(のWBC)まであるんだから、今回決めてもまた変わる。今回(の強化試合で)誰が投げようが、2月(の合宿)、3月まで影響しねえんだよ」とニヤリ。白紙を強調しているが、胸の内でシナリオは描かれているようだ。