ツバメの主砲が「侍の若頭」として存在感を発揮している。東京五輪野球日本代表・侍ジャパンの村上宗隆内野手(21=ヤクルト)だ。オープニングラウンド初戦のドミニカ共和国戦では9回に1点差へと迫る適時打を放つなど計2打点を叩き出し、チームの劇的勝利に貢献。さらにベンチ裏でも野手最年少ながら物おじすることなく堂々とした振る舞いを見せ、並み居る先輩強打者たちと対等にわたりあう。グラウンド内外で闘志をむき出しにする頼もしき姿に、周囲からの期待値もますます高まっている。


 とても21歳とは思えない。村上の放つ〝オーラ〟に侍ジャパンの面々は、誰もが感心している。「いい意味で遠慮がない。日本を代表する選手が勢ぞろいすれば、野手で一番年下なら一歩引いてしまいそうだが、まったくお構いなしにデンと構えている。そういう悠然としたところが、侍の先輩野手陣たちからも好感を持たれている」とは侍ジャパン関係者の村上評だ。

 ヤクルトではチームの誰よりも大声を出し、勝利への強い気持ちをむき出しにしてきた。阪神戦でサイン盗み騒動があったとき、阪神ベンチに向かっていった姿は「頼もしい!」とファンの間でも絶賛された。

 そんな〝闘志〟が代表でも存分に発揮できているようで、東京五輪の開幕直前、仙台市内で行われた強化合宿中もこんな出来事があった。グラウンドでフリー打撃を行い、ベンチに戻って来た村上が突然「あぁーっ!」と絶叫。周囲の先輩野手陣やチームスタッフには目もくれず「オレ、全然ダメっすよ! あぁーっ!」と叫び、頭を抱え込んだ。快音を響かせていたように見えたフリー打撃が、納得がいかなかったらしい。

「あれは合宿2日目。まだ合宿が始まったばかりでチーム全体が何となくぎこちなかったが、それから間もなく練習の雰囲気が明らかにガラリと変わった。彼のやる気と集中力に周りが感化されたことが何よりも大きかったからだと思う」(前出の関係者)

 また、24日の強化試合・楽天戦(楽天生命)では先発出場を果たしたものの4打数無安打。それでも試合後はベンチの真ん中に腰掛け、鈴木誠(広島)と吉田正(オリックス)の先輩2人をそれぞれ横に従えるような並びで談笑していた。この場面は中継映像でも流され、解説のG.G.佐藤氏が「4打席無安打の村上君がベンチで一番偉そう…最高ですね!」「彼は大丈夫。本当に頼もしい」などと大絶賛している。侍ジャパン内でも「やっぱり村上はすごいヤツ」「強心臓男だ」と見直されたという。

 チーム主砲の鈴木誠は、侍の4番について質問が及ぶとニヤリとしながら「村上選手がいるので僕はいいです」とジョーク交じりに答えている。また、吉田正も「合宿中は村上を打撃指導するような光景も見られたが」と問われると「いやいや、僕よりすごいのでおこがましいです」と白い歯をのぞかせながらコメントしていた。村上が侍ジャパン内で、いかに先輩たちに受け入れられているかがうかがい知れる。

「金メダルを取ることが僕たちの使命。その力に一つでもなれるように頑張りたい」と言い切っている村上が「侍の若頭」としてチームを頂点へと導く。