さながら「バッハLOVE」ということか。東京五輪に臨む野球日本代表・侍ジャパンが、28日のドミニカ共和国とのオープニングラウンド初戦(福島)で出陣。試合の始球式には、王貞治氏(81=ソフトバンク球団会長)とともに国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(67)が登板予定で〝御前試合〟の実現は、今大会で正式種目から外れる野球・ソフトボールの五輪競技復帰に向けても大きなプラスに働くと期待が寄せられている。

 侍ジャパンは27日の午後1時から、約2時間にわたって福島県営あづま球場で最終調整を行った。台風接近に伴って悪天候が予想されたものの雨は上がり、選手たちは室内練習場での打撃練習やグラウンドでノックを受けるなど汗を流した。

 稲葉篤紀監督(48)は初戦のドミニカ共和国の印象について「経験のある打者も多く力強いスイングをしてくるので、長打を警戒したい」と、MLBで通算344本塁打を誇るバティスタや通算1962安打のカブレラらビッグネームが揃う強力打線に目を光らせた。先発マウンドに立つ山本(オリックス)ら侍投手陣には「1イニングずつ、しっかり抑えてほしい」と力強いエールを送った。

 一方で侍ジャパンやNPB、全日本野球協会(BFJ)からは、あの「嫌われ者」の福島来訪を今後の〝好機〟ととらえる声が上がっている。始球式で登板予定となっているIOC最高権力者・バッハ会長に対し、ウエルカムムード一色となっているのだ。

 バッハ会長と言えば、その一挙一動が東京五輪開催地の日本を中心に大ひんしゅくを買っているのは今さら説明するまでもない。〝ぼったくり男爵〟との呼称が定着するなど、今やすっかり「ヒール」となっている。

 それでも侍ジャパンを含め、日本球界からバッハ会長に強いラブコールが送られる背景には、野球・ソフトボール競技が将来的に五輪復活を果たすためのキーパーソンだからに他ならない。次の2024年パリ五輪の追加種目候補から落選している野球・ソフトボールが再び正式種目として承認されるとすれば、現状では28年のロス五輪が「最短」の道のりだ。

「再任となったバッハ会長の任期は2025年まで。ただ、その任期までにロス夏季五輪の実施種目がIOCの理事会で固まる可能性が高い。そういう観点で考えてもバッハ会長が野球・ソフトボールの五輪復活のカギを握る。だからこそバッハ会長には福島で侍ジャパンの戦いぶりを見てほしい。加えて日本が母国開催で金メダルを取れば国全体が盛り上がり、野球競技はこれだけ人気があって国中を沸かせられるパワーがあるということもIOCのトップに印象づけられる。稲葉監督も金メダルを取って『ロスで野球競技が存続されることを願う』とメッセージを発してくれれば説得力もアピール性も高まり、バッハ会長の心も動かせるはずだ」(侍ジャパン関係者)

 世界野球ソフトボール連盟(WBSC)のリカルド・フラッカリ会長も「バッハ会長の来場を五輪復帰への『千載一遇のチャンス』とみている」(前出の関係者)という。

 だが、当のバッハ会長は今大会の野球始球式登板が08年の北京五輪に続く2度目となるものの、周囲から「そもそもドイツ人の元フェンシング選手で野球にはまったく関心がないらしい。『復興五輪』のテーマに沿う形で福島に来場したかっただけで、その種目がたまたま日本の人気スポーツ・野球だったということ。多忙な存在だけに始球式のみで日本戦は最後まで観戦せず、途中で球場を離れる予定という話もある」との見解もささやかれている。