侍ジャパンに潜む〝敵〟は――。25日に行われた強化試合(楽天生命)で対戦した巨人の村田修一野手総合コーチ(40)は、五輪特有の難しさをこう指摘していた。

「WBCは野球だけなので、準備も場所もしっかりしていますし、そういう意味ではやりやすかった。五輪は野球だけの競技ではないので、あり得ないことが起きる。それに対応するのは、すごく大変だった記憶があります」

 村田修コーチは2008年の北京五輪、09年のWBCに出場した経験を持つ。北京では日の丸を背負う重圧や体調不良も重なって打率8分7厘に低迷したが、要因は別にもあったと振り返る。

「(シーズン中の試合前の)練習はホームチームだったら必ず1時間半ぐらい用意されていますし、ビジターのチームでもそれに近い時間を費やして試合に臨む。それが北京五輪の場合は45分だったり、前の試合が押せば、30分になったり…」

 この超短時間調整こそが歯車を狂わせる〝落とし穴〟になったという。今大会の出場メンバーで五輪経験者は田中将のみ。試合前の打撃練習時間も「40分間」と定められ、球場入りする時間もホーム側は試合開始の「3時間半前」などの制限があり、いわゆる「早出」で調整することも認められない。

 日々変化する体調に合わせ、普段の半分程度の時間でいかにルーティンをこなし、最大限のパフォーマンスを発揮するのか。日本代表は2試合の強化試合で本番と同様の〝時短調整〟を行い、侍戦士からは「時間の使い方をスピーディーにやらないといけない」との声も上がった。

 この日の侍ジャパンは11安打、5得点をマークしたが、本戦でも不慣れな調整法に順応できるかが金メダル奪取へのカギとなりそうだ。