侍ジャパンの初戦(28日=対ドミニカ共和国)での先発が有力視されている山本由伸投手(22=オリックス)が、24日に予定される強化試合・楽天戦の先発登板から、投球スタイルを変更することをほのめかしている。

 150キロ超の直球に加え、落差のあるフォーク、スプリットが代名詞だったが、今後は五輪本番に向けてあえて自らの持ち味を「隠ぺい」。意図的に球種や配球を変更することで、チームに悲願の金メダルを導こうとしている。

 山本が五輪本番での投球を見据え、今後「ニュー由伸」に激変する決意を明かしている。翌日に楽天との強化試合を控える23日のオンライン会見で、こう本音を漏らした。

「(24日の強化試合は)いつもバッターに投げている配球とは多少変わるかもしれない。(強化試合は)あまり結果を気にし過ぎず、いろいろなことを試せたらなと思っています」

 今や侍ジャパンのエース格にまで成長した右腕。その武器は言うまでもなく150キロ超の直球と落差、威力のあるスプリット。今季前半戦もその2球種を中心にパ・リーグの強打者たちを翻ろう。勝ち星や奪三振を積み上げてきた。だが、今後はあえて持ち味を前面に出さず、普段多投しない球種や配球を織り交ぜながらの投球を試みていくというのだ。

「大会が始まると(相手がすべて)外国人相手になるので。しっかりそういうのを想定して投げられればいいかなと」。本番直前に自らの投球スタイルを変更する背景には、他国007をかく乱させる意図も見え隠れする。

 山本といえば今や「メジャーに最も近い日本人投手」として海外でも注目度が高い。当然、五輪初戦で対戦するドミニカ共和国も日本の豪腕については研究済みで、同国偵察部隊も過去の映像などで山本を丸裸にしているはず。そこであえて自らの投球スタイルを封印。普段の配球や球種を変えることで、相手打線に「おや?」と思わせる狙いがうかがわれる。

 もちろん自らの持ち味である直球を中心とした組み立てを急変することは容易なことではない。ただ、山本の究極の目標は金メダル。そのためには細かい体裁にこだわる必要はない。

「(自分自身)特にピッチングに絶対これを投げたい、とかっていうこだわりはないので。(キャッチャーと)話し合いながら、しっかり抑えられる配球で行けたらなと思っています」

 すでに日本代表でバッテリーを組む予定の甲斐(ソフトバンク)とは、23日のブルペン投球で配球面などを確認済み。楽天との強化試合で「対ドミニカ共和国」を想定した投球を披露し、そこで出た課題を修正して大事な侍ジャパンの初戦に臨む構想を描いている。

「とにかく金メダルを取れるように準備をしていけたらいいと思っています」と不敵な笑みを浮かべ、自信をのぞかせる山本。新たな由伸の投球に侍ジャパンが運命を託す。