五輪日本代表・侍ジャパンに初選出された阪神・青柳晃洋投手(27)のフィールディングが世界の野球関係者の注目を集めそうだ。これまでセ・リーグ2位の8勝をマークし、防御率1・79はリーグトップ。首位の猛虎投手陣をけん引する変則右腕は苦手な分野を割り切り、トータルでの完成度を高めた。そんな現在の姿は同じ種の悩みを抱える野球選手の〝希望の光〟となりそうだ。

 今季の青柳は課題だった対左打者の被打率も昨年の2割8分台から2割9厘と大きく改善。ゴロアウトは全体の50%超え、「打球の上がりにくいクセ球」は球界でもオンリーワンの軌道で、代表の稲葉監督からも「計算できるゴロアウト投手」と、国際舞台では大きな武器となる変則投手として先発・中継ぎ両輪での活躍を期待されている。

 ア・リーグのスカウトも「メジャーのボールと相性があって、この投球ができれば面白い。クイックも1秒前後で日本で5本の指に入る」と大会で注目する投手の一人に数える。一方で右腕の〝個性〟にも、一目置いているという。

 それはマウンド周辺の投ゴロのフィールディングだ。青柳は一塁へはアンダーハンドでトスするか、距離が遠ければ、ワンバウンドで投げる。プロ入り後、このプレーで送球難に陥り、それ以降「どんな形でもアウトにすることが大事」と、なりふり構わぬスタイルを貫いている。本場・米国ではこれをむしろ「欠陥」と見るより「賢い」と評する傾向は、日本よりも強いという。

「もちろん投げられるに越したことはない。でも、それに固執し過ぎて、それ以外の要素まで崩れていく投手は米国でもたくさんいます。でも彼は〝割り切り〟をきかせたことで、それ以外の部分をコツコツと伸ばしていくに成功した。一塁へノーバンで投げる技術がなくても、プロで2桁勝てることを証明するでしょうし、防御率も立派。メンタルコントロールが優れた『自分をよく知り尽くした』投手ですよ」

 また、五輪のような国際舞台でも、青柳がこのスタイルでアウトを稼ぐシーンがあれば本人は意図せずとも、無言のメッセージを世界に配信することにもなるという。

「何かしらの送球難に悩む選手は別にプロに限った話でも、国や地域に限った話でもない。むしろこれまで高校生や中学生の段階でそれに思い悩んで、野球すらあきらめてしまう子がこれまでどれほどいたか。それを考えたら、彼がトップチームのジャパンのユニホームを着てワンバン送球でアウトをとる姿はそれだけで〝メッセージ〟になるはずですよ」(MLBスカウト)

 世界を相手に青柳が「自分のフィールディング」を披露することで、世界に無数にいる同じ悩みを持つ若い世代の野球選手を勇気づけることにもつながるという見解だ。

 投げることにおいての一部分は、その投手を語るうえですべてではない。五輪でも、その一挙手一投足に注目が集まりそうだ。