【東京五輪】日本へ敵意むき出しのキューバが不気味な存在

2021年05月03日 10時00分

「赤い稲妻」ことキューバ代表(2013年)

【広瀬真徳 球界こぼれ話】開催がいまだ不透明とはいえ東京五輪まで残り3か月を切った。

 母国で悲願の金メダルを狙う野球日本代表も予定通りであれば5月末から6月上旬に代表24人が選出される。米メジャーで活躍する選手の参加は所属チームとの調整もあり見送りが濃厚も、国内組は五輪期間中プロ野球公式戦が一時中断されるため最強メンバーが選ばれる可能性が高い。そうなれば侍ジャパンの躍進も夢ではないのだが、気になるのはライバル国の動向。とりわけ東京五輪への出場権を獲得していないキューバが不気味な存在と言える。

 2019年に行われた野球の国際大会「プレミア12」では韓国でのオープニングラウンドでまさかの最下位敗退。この結果を受け野球関係者やファンの間からは「キューバはもはや強豪国ではない」という声が多数聞かれた。確かにプレミア12の結果だけを見れば「赤い稲妻」と長く恐れられたキューバ代表の弱体化は否めない。それでもWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)やオリンピックでは国の威信をかけて戦う有名な集団のこと。油断はできない。

 実際、国際大会の現場でキューバは手段を選ばず貪欲に勝利を狙う。そんな光景を目の当たりにしたのが09年の第2回WBCだった。

 日本は準決勝進出を争う第2ラウンドでキューバと2度対戦した。当時はまだ取材陣がベンチ前で選手やチームスタッフに取材を行えた時代。スペイン語が中心の選手に取材ができない代わりに英語を操るチームスタッフに何度も取材を試みたが、出てくる言葉は虚言によるだましと自信に満ちたコメントばかりだったことを今でも覚えている。

 エース格の投手が「右足首を負傷した」という偽情報を流したかと思えば、別の日には各選手が意図的に背番号の違うユニホームを着て練習に臨むなど、ルールの範囲内で周囲をかく乱することが珍しくなかった。そのうえでチームスタッフは「日本に勝てば我々には明るい未来が待っている。負けるわけにはいかない」と敵意むき出しに挑発を繰り返してきた。

 結果的に同大会で日本はキューバに連勝。WBC連覇を成し遂げたが、今もキューバはメジャーや日本球界に多くの選手を送り出している。選手側も「海外のリーグで活躍し富を得る」という気持ちが強い。そうした背景を鑑みれば野球大国であることに変わりはない。

 キューバは6月に米フロリダ、台湾で行われる東京五輪に向けての予選会への参加が予定されている。五輪出場権を獲得できるかは微妙な状況だが野球への熱量は他の強豪国以上のものがある。五輪出場となれば日本を脅かす存在になりかねないだけに注視しておく必要があるはずだ。

☆ひろせ・まさのり=1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。

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