国際大会「第2回プレミア12」で初優勝を飾った侍ジャパン。選手たちの躍動もさることながら今大会では舞台裏で指揮官が貫いた「選手ファースト」の姿勢も見逃せない。稲葉篤紀監督(47)の気配りが、来年8月の東京五輪での金メダルを目指す日本代表を「ONE TEAM」にした。

 稲葉監督は18日、東京都内で一夜明け会見を行い「(秋山)翔吾がケガをしましたが、他の選手は大きなケガなく優勝できたということでいい形で終われたなという思いです」と晴れやかな表情を見せた。

 決勝戦後、チームの解散前に選手には「ありがとう」と言葉をかけたという。さらに「オフシーズンにもかかわらず日本のため、野球界のために集まってくれた。このメンバーがこれからの野球界を引っ張ってほしい」と伝えたことも明かした。

 そんな指揮官を巡っては大会期間中に選手やチームスタッフが感心するシーンが多々あった。今月2日、那覇から台湾へ入った時のこと。選手たちが機内で数少ないビジネスクラスや前方のシートに座る中、稲葉監督は後部のエコノミー席に。これには他の乗客たちも「おい、あれって稲葉監督じゃないか…」「何で日本代表監督が、あんな後ろの席のエコノミーに座ってるんだ?」と驚きを隠せなかった。

 他競技では協会関係者のお偉いさんがビジネスクラスに座り、肝心の選手がエコノミー席に座ることも珍しくない。侍ジャパン関係者も「日本代表監督がエコノミー席に座るなんて前代未聞。もちろん稲葉監督にはビジネスクラスが用意されるはずだったが、自ら『自分はいいから選手たちを優先してほしい』と要望したのです。選手たちからも稲葉監督の気配りに感謝の声が絶えませんでした。ちなみに台北からの帰りの便も後部席のエコノミーに座っていましたね」と明かす。

 宿舎ではこんなこともあった。「稲葉監督はポテトサラダが大好き。ところが宿舎の朝食バイキングに遅めに姿を現すため、好物のポテサラがなくなっていることが多かった。遅くやってくるのは『選手たちに、たくさん好きなものを食べてほしい』との気持ちから。ふびんに思ったスタッフが『監督、私のポテサラをどうぞ』と譲ったこともあったのですが、稲葉監督から『いやいや、俺のことは気にしなくていいから食べて食べて!』と断られたそうです。この徹底ぶりは本当にすごいですよ」

 世界一になっても偉ぶらない。東京五輪で金メダルに輝くまで、稲葉監督の謙虚な日々は続く。