今後もこの男は外せない。国際大会「プレミア12」に出場中の侍ジャパンは、13日に東京ドームで行われたスーパーラウンド・メキシコ戦に3―1で勝利。3勝0敗でトップを走っていたライバルに初黒星をつけた。この試合で物議を醸したのは、ここまでインケツ続きだった坂本勇人内野手(30=巨人)の先発出場だったが、フタを開けてみればその坂本勇が大当たり。対戦相手もびびる「サカモト」のネームバリューとは――。

 悩める背番号6がようやくお目覚めか。2番に座った坂本勇が、今大会初適時打を含む3安打1打点の活躍で3―1の勝利に大きく貢献した。

 初回の第1打席、初球を引っ張った打球は左寄りにシフトを敷いた二遊間を破る左前打となった。坂本勇は「たまたま相手がシフトを敷いていてくれたから。ただのショートゴロ」と苦笑いで振り返ったが、この1本で「気持ちがすごく楽になった」という。

 続く2回一死一、二塁の第2打席は、今大会初タイムリーとなる左前打を放ち、塁上でガッツポーズ。ようやく笑みもこぼれた。6回にも左前打を放って猛打賞。ただ、本人としては満足から程遠い状態が続いているようで、試合後は「内容的にはいい安打とは思えない」と何度も首を横に振り、4タコ3三振だった前日を引き合いに「振りにいったのが前に飛んだというのが違いかな」と自虐的に振り返った。それでも「どんな形でもつなぐことが大事。継続したい」と下は向かなかった。

 そんな坂本勇に試合前から“脅威”を感じていたのが対戦相手のメキシコだった。

 不振の坂本勇が「2番・遊撃」でスタメン発表されると、周囲からは「なぜスタメン? オーストラリア戦でセーフティースクイズを決めた源田を起用すべきでは?」という疑問の声が各所で噴出したほどだったが、メキシコ代表でこの試合にも「5番・一塁」で先発出場した元阪神のエフレン・ナバーロ内野手(33)は「彼は素晴らしい選手。どんな状態であろうと彼がチームの中心選手」と話すと、こう続けた。

「もし日本でレベルの高い選手を挙げろと言われたら、僕は『サカモト』の名前を真っ先に挙げる。彼は走攻守すべてが揃っている印象で、相手から見て脅威だった。僕の中で彼はジーター(元ヤンキース)のような存在。チームメートにも彼の才能や能力をすべて伝えているから、みんな彼のことを尊敬している。サカモトを外すなんて考えられないよ」

 ナバーロの言葉通り、試合前練習では坂本勇の打撃練習が始まるとメキシコ選手や関係者が一斉に注視。「サカモトに憧れている」というメキシコの捕手・アリアサが本人とのバット交換に成功すると、普段は陽気なラテン系軍団もその光景を羨望のまなざしで見守っていた。

 この日のスタメン起用について、坂本勇のひたむきな練習姿勢に感銘を受けていたという稲葉監督は試合後「努力は野球の神様が見てくれているという思いが強かった」と“神頼み起用”だったと説明したが…。その存在感で海外の選手をもびびらせるこの男は、やはり外せないということか。